みなさま、こんにちは!修習技術者支援委員会の小塚です。今回は専門技術能力「資質能力向上講座」として、「他人に理解される論文の書き方」が行われました。講師は福田遵先生(福田遵技術士事務所代表)でした。
本研修会は機械振興会館の会場参加とオンラインの会場参加のハイブリッドで行いました。参加人数は会場参加者は13名、WEB参加者は40名と大盛況でした。
会場の様子
司会者:修習技術者支援委員会 島田委員
1、開会挨拶
始めに修習技術者支援委員会の片岡委員長より挨拶を頂きました。
本日の研修で説明される「他人に理解される」文書作成の基本を実践して下さい。技術士試験にも活用できますが、それ以上に日頃の業務に大いに役立つと思います。
片岡委員長挨拶
2、講演「他人に理解される論文の書き方」
続いて福田先生のご講演が行われました。
福田先生のご講演
福田先生のご講演
2‐1、自己紹介
福田先生は、千代田化工建設株式会社に入社され、電気設備だけではなく発電から送電まで幅広くご経験されました。その後、明豊ファシリティワーク株式会社に入社され、プロジェクトマネジメント部の部長としてご活躍されました。続いてアマノ株式会社に入社され、パーキング事業本部副本部長として業務改革に成功されました。そしてアマノメンテナンスエンジニアリング株式会社で副社長としてご活躍され、現在は福田遵技術士事務所の所長としてご活躍されています。
技術士会での活動では、青年技術士懇談会(現、青年技術士支援委員会)、企業内技術士委員会委員、技術士試験制度検討委員会委員、東京弁護士会PL弁護団の技術顧問、さらに神奈川県支部修習技術者支援委員会委員として幅広く活躍されております。
2‐2、論文を作成するための基本
「なぜ?自分の書いた企画書・提案書・プレゼン資料が評価されない。」と不満を持つ人は多いと思います。その根本的な理由は下記4点が挙げられます。
①何が求められているのか理解していない。
②勝手な判断で話を進めてしまう。
③自分の記述能力の把握ができていない。
④何が重要かを途中で忘れてしまう。
お客様や上司が求めていることはお客様や上司ご自身で理解していますが、自分の勝手な判断が入ることで受け入れて頂けません。即ち、相手が求めているものは何かを理解する必要があります。
2‐3、技術者が陥りやすい落とし穴
技術者は下記の点を注意しなければ自分勝手な意見に陥る可能性があります。
①顧客・経営者の関心が共通している点を知らない → 社会の動きに無頓着になっている
②自己をアピールする点にだけ拘る → 人と違うことがアピールすると誤解している
③評価される点を理解していない → 文字を埋める点だけに拘り過ぎる
④自分の主張を述べる点に拘り過ぎる → 相手の考えをくみ取らない
2‐4、論文を作成するための基本姿勢
孫子の兵書より、「彼(てき)を知り、己を知れば百戦あやうからず」という言葉が論文作成・コミュニケーションにとって、とても大切になります。この言葉の中で、彼(てき)とは、対象の目的であり、相手が求めていることを示し、己とは、論文力・経験の深さであり、ご自身の能力を示します。彼(てき)を知るということは相手の求めていることを引き出す、つまりコミュニケーション能力が大切となります。
また論文を作成するにあたって、「木を見て森を見ず」にならないことが重要となります。「木」とは個々の問題の字面に囚われないことで、「森」とは概念を考慮することです。即ち個々の問題だけに囚われると全体を見渡すことができなくなります。
2‐5、論文の書き方実習
論文を作成するにあたって、以下の4点が重要となります。
①畳みかけるような軽快な文章を作る → 冗長な文章とならないように常に配慮する
②箇条書きを効果的に使う → 箇条書きだけで文章を構成するのはNG
③句読点を効果的に使う → 句読点は音読の息継ぎタイミングと考える
句読点の位置によって、捉え方が異なるので注意が必要
④副詞や接続詞の使い方に慣れる → 副詞や接続詞の使い方で文章が際立つ
また、文章を書きなれていない方や文章作成に自身のない方には150字法(1文70字程度
×2文でまとめる手法)がお勧めです。
例題1、文章の要約(13行の文章をわかりやすく要約する)
これは福田先生が回答案を提示されました。元の文章は読点(、)はありましたが、句点(。)が1つだけで、長くて理解しにくい文章でしたが、箇条書きと句点(。)を組み合わせることで、とてもわかりやすい文章になりました。
例題2、文章の主語は何か(文章を読んでもらい、会場参加者に文章の主語は何かを問う)
会場参加者に文中の主語を発表頂き、福田先生からアドバイスを頂きました。主語については絶対に書かなければならないわけではありませんが、常に何かを考えながら文章を書く必要があります。(読み手に主語を考えさせないことが大切です。)
例題3、Yes、But法、No、But法を使った文章の要約(WEB参加者が発表)
WEB参加者の発表を聞き、福田先生よりアドバイスを頂きました。このYES、But法、No、But法は文章を目立たせたいときに有効な表現方法となります。
例題4、接続詞の有効活用(接続詞の追加)(会場参加者とWEB参加者が発表)
会場参加者とWEB参加者の発表を聞き、福田先生よりアドバイスを頂きました。
よくつかう接続詞として、「また」、「さらに」、「しかし」、「ただし」、「詳しくは」、「よって」、「結論は」、「ところで」などあります。
接続詞をいれないとぎこちない文章になりますが、接続詞がはいることで読みやすい文章に変わります。また、文章が長いと感じたときは接続詞で区切ることでわかりやすくなります。
例題5、接続詞の有効活用((いろいろな接続詞の活用)(WEB参加者が発表)
WEB参加者の発表を聞き、福田先生よりアドバイスを頂きました。
例題4と同様に接続詞が入ることでわかりにくい文章が理解しやすくなることを実感しました。
例題6、文章の書き換え(会場参加者とWEB参加者より発表)
会場参加者とWEB参加者の発表を聞き、福田先生よりアドバイスを頂きました。
一言に「こと」といっても、前述した文章を指す「こと」、何かの事実を示す「こと」、場合(ケース)を示す「こと」、結果を示す「こと」、事実や内容を示す「こと」、無意味(不要)な「こと」があり、「こと」を乱用すると文章がわかりにくくなります。(「こと」を使ってはいけないという意味ではなく、読む人にわかりやすい単語を使うことが大切です。)
また、なんでも「こと」でごまかしてはいけません。
実習1、論文作成の実習(会場参加者とWEB参加者より発表)
会場参加者とWEB参加者の発表を聞き、福田先生よりアドバイスを頂きました。
厳しいアドバイスを頂きましたが、とても参考になったと思いました。
2‐6、おわりに
名刺に「技術士」と表記できることや技術者と名刺交換すると尊敬の言葉がでる等、技術士になって得るものは多くあります。また、福田先生は「論文の書き方」に関する書籍を執筆されておりますが、発電や送電、電気設備に関する技術書も多く執筆されております。
講演の最後に会場参加者限定ですが、2名の方に福田先生の執筆された本がプレゼントされました。
3、閉会挨拶
修習技術者支援委員の名平副委員長より挨拶を頂きました。
長時間の研修お疲れ様でした。
論文の書き方として日々の業務に活用できることを感じました。また論文の書き方に関して改めて至らないことが分かりました。今後気を引き締めて勉強していこうと思います。
名平副委員長挨拶
4、研修会終了後
研修会終了後、参加者全員で集合写真を撮りました。その後、WEB参加者はオンライン交流会、会場参加者は懇親会を行いました。
研修会後の集合写真
懇親会状況
懇親会状況
5、ブログ後記
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
本研修会を通じて、私自身も相手に何かを伝える時(文章や会話)、福田先生のお話されていた相手の考えを理解してから文章をつくることや会話をするといったことを心掛けていますが、まだまだ至らないなと感じたと共に表現方法等、色々と学べた良い機会でした。本研修に参加された皆様も明日以降の業務に多いにご活用頂ければと思いました。
来月以降の研修会も、とても充実した内容になりますので、是非ともご参加頂ければと思います。
修習技術者支援委員会
小塚 隆