2024年10月度研修会(令和6年10月12日 13:30~17:00)
興味をもってこのブログをご覧になってる皆様、こんにちは!
10月度ブログ担当は修習技術者支援委員会の野田宏治です。
今回の課題、講師は以下の通りです。
〇課題
キャリアプラン・セミナー「プロフェッショナルエンジニアになる道筋を考える」
今回は、自分のキャリアに応じたPC(Professional Competencies)を習得するために、各能力をどう伸ばしていけばよいか、目指すべきキャリアについて、グループワークを通して事前に用意した技術者モデルのキャリアを考えました。
〇講師:築城英生氏(技術士 建設部門・総合技術監理部門)
(日本技術士会統括本部修習技術者支援委員会委員)
〇司会進行:技術者修習委員会中村委員(オンライン参加)
研修会は機械会館の会場参加とオンライン参加のハイブリッドで行いました。会場参加8名、オンライン参加15名の23名でした。
1.開会挨拶
修習技術者支援委員会片岡委員長からご挨拶をいただきました。
修習技術者が資質能力を獲得する研修(IPD)、その期間で備えるべき資質能力をコンピテンシーと呼び、自己研鑽や研修会があり、参考ガイドブックとして「修習ガイドブック」、「IPD活動ガイドブック」(技術士会HPに掲載)がある。IPD活動の重要3点も紹介された。
2. 講演 キャリアプラン・セミナー「プロフェッショナルエンジニアになる道筋を考える」
築城委員による講演が行われました。講義50分の後、参加者が5つのグループに分かれ、年齢や立場が異なる技術者へのアドバイス等を考えるグループワークと発表を行いました。
講演者 築城委員
講演風景
2.1 講師自己紹介
講師:築城英生
2.2 技術士法・技術士制度と技術士試験
・受験の動機
10年ほど前に大規模な駅前の再開発(街区の整備と建物建設)に携わる。土木系のコンサルタントを交えて打ち合わせの機会があり、相手側は全員技術士であった。こちらは自分と営業担当者。建築の設計・施工を専門とする打合せの中で自分に対し技術的意見を求められる機会があった。相手側の態度が「建築屋さんに意見を求めても無理だよね」との雰囲気で自分の話を全然聞いてくれない状況になり、打ち合わせが止まる。打合せ会議は進めるが、会議参加者との信頼関係は築けない状況が続いた。最終的に会社として再開発事業への参加はできなかった。
このままではダメで、自分が技術士になって自分を信用してもらい対等の立場で仕事をすることを求め、技術士の受験をした。
3回目の受験で合格。先輩技術士の添削、あらゆるセミナー参加による情報収集、重要なのは、コンピテンシー(技術士に求められるものは何か)を幅広く勉強した。
資格取得後には、土木系コンサルタントからの質問や自分を頼ってきてくれる、話しをちゃんと聞いてもらえるなどの変化があった。仕事もたくさんもらえるようになり、民間の建物に加え公共の建物も扱えるようになった。
・技術士法
(目的)第一条 技術士等の資格を定め、その適正を図り、もって科学技術の向上と国民経済の発展に資することを目的とする。
(定義)第二条 技術士とは・・・科学技術に関する高等の専門的応用能力を必要とする事項についての計画、研究、設計、分析、試験、評価又はこれらに関する指導の業務を行う者をいう。
・技術士制度
技術士制度は、「科学技術に関する技術的専門知識と高等の応用能力及び豊富な実務経験を有し、公益を確保するため、高い技術者倫理を備えた、「優れた技術者の育成」を図るための国による資格認定制度です。
・技術部門
21部門
・技術士試験
年間を通じた一次試験、二次試験の受験申込から合格発表までの流れが説明された。
・技術士第二次試験への受験経路
第一次試験と第二次試験の分野は異なっていてもよい。
2.3 IPD:Initial Professional Development
能動的な態度で資質を向上させる所属組織内だけでなく、外部にも資質向上の機会を設け自分の成長に繋げる。その中身・原因を分析し、次への自分の成長に繋げる。PDCAサイクルの実践。
・技術士の国際化とIEA(International Engineering Alliance:国際エンジニアリング連合)との関係
IEAは非営利の国際組織。IEAが提唱しているGEAとPCについて日本技術士会が2023年4月に4版の翻訳の改訳版を出した。左下図に示す緑の文字と青の文字は同等の関係性を持つ。
右上図はIEAの構成図です。右側が教育認定(3つのアコード)の相互承認で、左側が専門資格認定の相互承認を示す。2つの協定と枠組みで成り立っている。
しかしながら、教育認定と専門資格認定では、図中真ん中に示す関係性(呼称)は異なり、枠組みによって考え方が異なる。
JABEEは左緑枠と右青色枠2団体に加盟している。エンジニアについて深堀をします。
・IEAのGA&PC
GA(Graduate Attributes)は認定された教育資格の取得。卒業資格。大学卒業、大学院修了など。高度な知識能力、修了時に習得しておかなければならない能力。
下図の3つの専門職種分類に分かれている。
今回はJABEEが加盟しているエンジニアについて説明します。教育プログラムとレンジについて、説明します。複合的なエンジニアリング問題のレンジ情報が規定されている。
GAのプロフィールについての説明もあった。
PCの定義。エンジニアについての説明があった。
・エンジニアリング活動のレンジ
リソースの範囲、相互作用のレベル、革新性、社会と環境への影響、身近さ がある。
・PCのプロフィール(プロフェッショナルエンジニア)
特徴の区別として、以下のキーワードがある。
普遍的な知識の理解と応用:教育の広がりと深さ、および知識のタイプ
地域に固有の知識(local knowledge)の理解と応用:地域的な知識のタイプ
問題分析:分析の複合性の程度
解決策のデザインと立案(Design development of solutions):問題の性質と解決策の独自性
評価:活動のタイプ
社会の保全:持続可能な成果に配慮することに向けた活動と責任のタイプ
法律、規制、及び文化:この特徴に職種の違いはない
倫理:この特徴に職種の違いはない
エンジニアリング活動のマネジメント:活動のタイプ
コミュニケーションと協働:包括的なコミュニケーションの要求。この特徴に職種の違いはない
継続研鑽(CPD)と生涯学習:継続学習の心構えと深さ。この特徴に職種の違いはない
判断:開発した8身に着けた)知識のレベル、及び活動のタイプに関連した能力と判断
決定への責任:責任を置く活動のタイプ
GAとPCには、エンジニアリング教育の認定基準やエンジニアリング専門職に期待される
コンピテンシーとそれらの相互作用を整理している。専門職の養成から登録までを体系的なシステムを確保している。レベルの高度化と実現を目指している。
・GA&PCの3つの職種分類と技術士
IEAでは、右表に示す、
1.エンジニア(Engineer)、
2.エンジニアリング・テクノロジスト、
3.エンジニアリング・テクニシャン
分類される。日本の技術士は“PE”。
GA&PCは、職種の水準でであるが、その水準に同のように到達するかは示されていない。
・技術士に求められるコンピテンシー
技術士資格
の国際的同等性の確保のためには、IEA(International Engineering Alliance、国際エンジニアリング連合)のPC(Professional Competencies、専門職として身に着けるべき知識・能力)を踏まえることが重要であるとの認識。
2021年にIEA総会でGA及びPCの改訂が行われ、日本技術士会も改定を行うことになっ
た。
社会の変化に対応するために、知識、スキル、態度、価値観を再度定義し、支える教育方針、方法論を明らかにする狙いがある。
技術士に求められるCPD(技術士の継続研鑽)や資質の向上が重要視されていることを踏まえ、国際的に通用するものであるために資質能力(コンピテンシー)の改訂をおこなった。
改定に際し、右図に示す内容が考慮された。
技術士に求められるコンピテンシーは、下左図の8項目。右図は、修習技術者がIPDで身に着ける3つの基本修習課題と資質能力を示す。
右図は、技術士コンピテンシーと修習技術者の基本修習課題と資質・能力を対比で示す。
修習技術者では基本修習課題を3つのグループにまとめられている。
修習技術者に求められる資質・能力16項目の資質能力の習得により、技術士のコンピテンシーを獲得できる。
これらの資質能力を獲得できたのかを確認するのが、技術士二次試験である。
こののち各コンピテンシーについて詳しい解説があった。
2.4 GA・PC・コンピテンシーを身に着ける
・GAを得た若い社会人が技術士を目指す場合
修習技術者から受験までの期間が短いため、キャリアに応じたPC・コンピテンシーを効率よく習得することが求められる。多くの迷いがある。
・経験を積んだ社会人が技術士を目指す場合
社会人になって様々な知識と経験を積んできたが、技術士として自分が何をしてきたか。GA&PC・コンピテンシーの不足を習得することが求められる。自分のキャリアを振り返ることで、その不足分見えてくる。その不足分を補うために目標を定めて、不足を認識し保管する活動を実践することが必要である。
・修習技術者にとって
右上図の示される課題を整理して自分のキャリア年表を作りGA&PC・コンピテンシーを振り返る。目標を定めて不足を認識し補完する活動をしましょう。
3. グループワーク
モデルケースの7名に対する以下の項目を提案する。
3.1 グループワーク1
WEB参加グループ、会場参加グループそれぞれのグループで自己紹介と参加者各自がIPD活動でPCを習得・強化する際に、最も重要と考えるコンピテンシーと、その理由をシートに記入し、グループ内で説明し、意見交換を行った。
3.2 グループワーク2
進行、書記、発表、時計、他のグループ発表への質問者、他からの質問に対する回答者の役割分担決めた。
- 得られたGA これから必要と思われるGA
- 得られたPC これから必要と思われるPC/コンピテンシー
- 強化すべきコンピテンシー
- コンピテンシー強化のためのPDCAサイクルのシナリオを1つ
- 技術士となった後のキャリアについてのアドバイス
グループワークの様子
検討すべき7つのモデルが講師より事前資料として配布され、それらを基にグループワークを行った。
どのモデルも講師の周辺に実在した人物として、紹介された。
モデル
モデル | 年齢 | 性別 | 詳 細 |
1 | 20代 | 男性 | JABEE修了。営業3年で転職。その後自治体水道局水質担当として2年勤務。二次試験は化学で受験希望。 |
2 | 20代 | 女性 | 工学部環境土木工学専攻卒業。JABEE修了。建設会社に就職し、4年大規模土木施施工計画、施工管理従事。その後設計コンサルタントに転職し、構造物の設計業務に4年間従事。二次試験は、どの分野で受験できるか。 |
3 | 30代 | 男性 | 大学院機械工学専攻にて修了。自動車メーカー設計部門で新型エンジン設計・開発に7年間従事。その後部署替えで課長となり、現在は製品のQCD管理やリスク管理、人材・機勢材・財務を担当。
一次試験受験はしておらず、JABEEは取得していない。 技術士試験の受験分野、IPD期間の習得のアドバイス。 |
4 | 30代 | 女性 | 工学部建築学専攻にて卒業。建築設計会社で13年間従事。業務内容は建物の設計において、発注者・社内・協力会社・住民の困りごとに対し調査・分析、原因を明確にし、解決策=成果物を創出(設計)している。
地震等の支援災害、建物の耐震性能向上、住民の安全確保が求められている一方で、建設コスト削減などでプレッシャーがある。一休建築士を取得しているが、二次試験はどの分野で受験できるか。 |
5 | 40代 | 男性 | 工学部電子工学専攻にて卒業。
電気メーカーに就職し、20年従事。生産部門で製造現場を管理。最近は、会社として新しい少量多品種型製品の開発を行っている。自身も営業・設計に同行しながら、客先の要望のヒヤリングや、社内部門との調整・コストダウンについて協議・協働を求められている。 一次試験は受験していない。二次試験は受験できるか。 |
6 | 40代 | 女性 | 理学部物理学専攻で卒業。民間コンピュータ会社で、プログラムの研究開発部門で20年従事。データ分析のためのアルゴリズムやデータ解析及びビジュアル化する研究開発に従事。
現在はプログラマーを管理する立場で一次試験は化学部門で合格。二次試験は化学部門か、他の部門で受験か、迷っている。 |
7 | 50代 | 男性 | 農学部を農業土木で専攻にて卒業。自治体に就職し、20年間在籍。発注者側として地方都市の再開発事業計画などに関する現場指導を行った。QCD管理やリスク管理を目的として、人材・機材・資金を適切に管理振り分けた。設計者・施工者と協働しながら地元説明・合意形成を図り、事業を取りまとめてきた。
現在は、管理職となり5年以上現場を離れ、事業供用後、今後の改善につながる助言を求められる立場。定年前に技術士をとりたい。受験部門や科目がわからない。一次試験は受験していない。 |
3.3 グループ発表
各班でモデル選定を行った結果、以下の通りとなり4,5,6に集中した。
班 名 | A | B | C | D | E |
選択モデル | 5 | 4 | 5 | 6 | 4 |
以下にグループワーク結果を示す。発表に対して他の班からの質疑応答があった。
・A班
・B班
・C班
・D班
・E班
3.4 講師からモデルの現状説明
講師からグループワーク2のポイント説明があった。
その後モデル④、⑤、⑥について、アドバイスとそれぞれ人物の現在が説明された。
4. 閉会挨拶と参加者集合写真
4.1 閉会挨拶
4.2 参加者集合写真
会場参加とスクリーンにはWEB参加者の集合写真です。
5. 研修会終了後の会場参加者による情報交換会の様子
毎回の研修会終了後、居酒屋に場所を移し情報交換会を開催している。WEB参加者もWEBで情報交換会を開催している。
6. 終わりに
今回の研修会は、講師の講演とその後参加者をグループに分け、モデルとなる技術者の現在を分析し、今後技術者に不足する能力や二次試験に向けてのアドバイスをする内容でした。
与えられた時間を有効に使い、5つのグループともに適切な分析とアドバイスの内容の発表でした。参加者の皆様、大変お疲れさまでした。研修内容を今後の参考としていただければ幸いです。
今回の研修会も会場参加とWEB参加のハイブリッドで運営しました。WEBを利用したグループディスカッションでは、機器の切り替え操作がスムーズに行われ滞りなく研修会を終了することができました。毎回WEB機器操作を担当していただく、飯田委員、島田委員に感謝です。
(修習技術者支援委員会委員 野田宏治)