ブログをご覧になっているみなさん。こんにちは!
1月度ブログ担当の修習技術者支援委員会見習い中の今野です。
1/18(土)の研修会は
「技術者・研究者のためのメンタル強化策入門」です。会場とWebで開催し、25名の方にご参加いただきました。
私は、メンタルが安定しにくいという自覚があります。厳しい言い方(と感じる)指摘に対してすぐにイラっとしてしますし、すぐに自分はダメだと思うため自己肯定感が低く、鋼のメンタルを持ちたい(いわゆる「鈍感力」を上げたい!)と常々思っております。そのような思いでこの講習を受講させていただきました。
今月は2つの講演とグループワークの構成で、研修会の幹事は前半の講演会講師の前野委員でした。
1. 開会挨拶
冒頭に修習技術者支援委員会の片岡委員長のご挨拶がありました。
技術者は、専門技術の観点を強調してしまう傾向にあり、そればかりでは対立が表面化し、間違った方向に舵を切ってしまうリスクがある。本研修を通じて、それぞれの立場から、気持ちを伝える、寄り添うなど、多様なアプローチを取れるようになることで問題分析の能力の向上のきっかけになればとの挨拶でした。
【片岡委員長】
2. 研修会
2-1. 講演1「技術部門におけるメンタル強化策」 13:10-13:40
講師:前野 聖二 先生
ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ㈱ 技術統括部(元業務管理部長・人事担当)
兼務 湘南工科大学非常勤講師、技術士(化学部門)
【前野先生】
前野先生は、カーボンの研究、導電材料の開発、製造のご経験だけでなく、人事を担当されていたご経験から、メンタルヘルスの改善業務も担当され、社内外の企業や日本技術士会でメンタル強化に関するセミナーでの講演のご経験がおありです。
2-2-1.ポジティブ思考
自分自身には物事がいろいろなものに見えてしまう「メガネ」を持っていて、自分の性格も見方によって変化するので、ポジティブな見方をした方がメンタル強化につながると仰っておりました。
講演では、性格の一面をネガティブ思考、ポジティブ思考でとらえたワードの比較をされていました。例えば、ネガティブ思考な「優柔不断」も、ポジティブ思考で「思慮深い、慎重」に言い換えられる。
ちなみに私は「空気を読んで自分を押し殺してしまう」性格を持っていますが、ポジティブな思考では「無駄な衝突を避けることができる」性格になります。
また、スライドの中で、上から読むとネガティブな状況が、下から読むとポジティブな状況になるという10行ほどの文章は、読み方でこんなに違うんだ!と印象的でした。
このポジティブ思考への変換は訓練で可能とのことで、少しずつ自分の業務の中に取り入れたいと思います。
2-2-2. 主体的な技術開発
(1)影響を及ぼせる範囲
自分自身が主体的にできることに集中するのがメンタル強化につながるというものです。
実験結果が自分の予測から外れたとしても、自然科学でAとBを足したらCになるのはどうしようもない。また、試験終了後は、試験結果が決まっているのでくよくよしてもしょうがない。自分が影響を及ぼせないことに悩まないように、影響の及ぼせる範囲を自覚しようというものです。
(2)技術開発目標を決めよう
特に、強調されていたのは、技術開発目標を自分の影響を及ぼせる範囲内に設定するということ。「自分の影響を及ぼせる範囲を明確にし、その範囲の中でたのしく活動することが技術部門におけるメンタル強化策の中で最も伝えたいことです。」ということを強調されていました。
例えば「〇〇開発による△△のシェア拡大」ではなく「△△のシェア拡大を念頭においた〇〇の技術蓄積」とするということです。
私自身の目標設定や部下の目標設定に活かしたいと思う内容でした。
2-2. 講演2 「メンタル強化の効果的手法と働き方改革」 13:50-14:50
石塚典子先生(臨床心理士・公認心理師・博士(医学)・東京大学医学部附属病院)
前野先生の講演に続いて、石塚先生より働く人自身が柔軟な心「しなやかな心」を作るための方法などのご講演いただきました。石塚先生は、医療系がん患者の支援、依存症の方への支援の経験があり、現在は東大病院に所属されている先生です。本来難しいトピックと思うのですが先生のわかりやすいご説明により、私はとても興味深く聴講させていただきました。
【石塚先生】
2-2-1.「しなやかな心」 を作ろう
(1) メンタルヘルス(心の健康)って何?
心の健康(いききと自分らしく生きる)の重要条件として、下の3つを上げられていました。
「精神的健康」 …自分の感情に気づいて表現できること
「知的健康」 …状況に応じて適切に考え、現実的な問題解決ができること
「社会的健康」 …他人や社会と建設的でよい関係を築けること
また、心を風船に例え、適度なストレスは心地よい興奮と緊張を与えてくれ、過度になると小さなストレス要因に反応して破裂してしまうとのことです。
皆さんは「心のセルフケア」をしておりますか?体のセルフケアをしている人は54%、心のセルフケアをしている人は15.2% とのことでした。
(2) 心の健康を維持・強化する方法(身体からのアプローチ)
そのあと、自律神経を整える(ON, OFFの切り替えを自分でできる)ためにリラクゼーションが必要である。ストレス低減法の紹介がありました。戦闘モードのままでは腸の動きが悪くなり、便秘になりやすいそうです。仕事のことを考えて、寝れなくなることありませんか?
私は両方当てはまっており、心のセルフケアの必要性を感じています。温泉施設で温泉に入ってぼーっとすることと、お笑いのテレビ番組を見ることをしたいと思います。先生によるとリラクセーションの一つに「笑い」がありました。
(3) 心の健康を維持・する方法(心理学的アプローチ)
先生が一番重要とおっしゃっていたパートです。後半のグループワークの内容になります。
心理学のABCD理論に基づいて、出来事(A)に対する結果、感情(C)の間に、B(信念、思い込み、認知)があるということで、前向きに考える第一歩はそのB(信念、思い込み、認知)があることを知っておくことが重要とのことです。そして、これらは長年の積み重ねで自動的に出てくるので自分で気づくのが難しく、体に例えると「姿勢・歩き方」のようなものだそうです。
信念、思い込み、認知を自覚する練習として、他人を観察する、怒っている人の認知を推測する、ドラマや小説の登場人物を観察する、があるようです。今回のグループワークもそうですね。
個人的には、認知の例として挙がった漫才師どぶろっくの「もしかしてだけど」の話が面白かったです。(ここでは話せませんね。)
2-2-2.自分の気持ちを伝えよう
ここから自分の気持ちの伝え方についてご教授頂きました。
(1) 自己表現の 3 つのタイプ
自己表現をドラえもんの「のびた」「ジャイアン」「しずかちゃん」の3タイプに分類。
—–
〇のびた…非主張的 「私はOKではない、あなたはOK」
〇ジャイアン…攻撃的 「私はOK、あなたはOKではない」
〇しずかちゃん…アサーティブ 「私もOK、あなたもOK」
—–
(2) 自己表現の方法
上の「しずかちゃん」の「アサーティブ」な自己主張として、「I-メッセージ」「私を主語にする方法」やDESC法(枠組みなので難しいとのこと)を紹介いただきました。また、自己表現の注意点として、相手を責めるような言い方、さえぎるような言い方はやめましょうとのことです。また、怒りの感情についてマイルドな内に表現することの重要性や他人の怒りへの対処法を教えていただきました。
2-2-3.話を聴こう
(1) 「心」を聴こう
相談相手から状況や出来事が話されるときに、問題解決するのではなく、その行動の元の心や気持ち(悲しい・つらい・不安など)を引き出すことが重要で、相談相手はわかってもらえたと感じることで安心感を得る。そうすると自分で解決する・工夫する方向に進んでいくようです。
(2) 「心」を聴くためのコツ
「わかった気にならないこと」が重要とのことで、
経験したことがない病気、けがならなおさら、同じ病気、けがの経験があってもその捉え方は人によって変わるので注意が必要とのこと。話を聞くときには入りこまずに、ひとごと、俯瞰で見ることも大事とのことでした。聴くときの心構えとして、信長・秀吉・家康のホトトギスの例を使って、「一緒に鳴こう(①共同作業をする、②主役は相談している方)」を提唱しておりました。
会場の質問の後に休憩で、グループワークになりました。
2-3. グループワーク 「感情と認知」 15:00-17:00
目的:出来事に対する「認知(とらえ方・受け止め方)」が人それぞれ異なるということを体験する。
内容:一般的な出来事、技術士らしい出来事の各10場面から一つずつ選択する。その時の「気持ち・感情」とその背景となる「認知」をグループ内で出し合って、お互いの認識のずれを楽しむというグループワークでした。
オンライン参加で4グループ、現地参加で3グループが編成され、グループワークと各グループの発表がありました。
【会場のグループワークの様子】
私が参加したグループは、支援委員会の方のファシリテーター1名を含め6名で行いました。
我々のグループでは、「上司に注意された」「仕様に合わない要望、無理な納期、必要性の感じられない追加機能など求められて困ってしまった」という出来事を選びました。
皆さんそれぞれの場面での感情やその認知をストレートに出し合えたと思います。
一つめの「上司に注意された」の出来事では、「凹む」「悲しくなる」「怒り」「何も思わない」などの感情が出ました。若い時と今では感じ方が違うなどの意見もあり、同じ人の中でも経験、立場によって、感情や認知が異なるということが興味深かったです。
また、二つ目の「お客さんからの無理な要望された」出来事では、「焦り」「怒り」「もやもや」などが挙がり、認知についてお客様からの仕様を決定事項と感じる人と感じない人の相反するものがあったことは興味深かったです。
〇先生からの講評
ほとんど初対面の方なのに、和気あいあい、構えない姿勢はすごい。認知をさがすのは難しいと思いますが、いろいろ考えられている。交流、意見交換も含まれていて、よかったと思う。などとお褒めの言葉をいただきました。
先生の講評の中で特に下記が私の印象に残りました。
「認知を変えるのは勇気がいる。固まってきたことを崩す恐怖もある。」
「『成果を出せないと存在意義がない』という認知に気づいたのがよかった。現実的でなくても認知を考えてほしい。いつも結果が出るわけではないという認知を持つと気持ちが楽になる。」
3. 閉会挨拶と参加者集合写真
最後に、名平副委員長による閉会の挨拶をいただきました。
修習技術者支援委員会でメンタル、心理学を扱ったのは初めてでしたが、グループワークも活発でよかったです。技術士のコンピテンシーには心理学的要素があります。技術的な要素を学ぶだけでなく、本講習のようなスキルを身に着けることは現実的なコンピテンシーの向上につながると考えます。
【名平副委員長】
【参加者集合写真】
4. 研修会終了後の会場参加者による情報交換会の様子
研修会終了後、現地参加者は居酒屋に場所を移しての情報交換会の様子です。ブログをご覧の皆様にも楽しさが伝わればと思います。現地での情報交換会とは別にオンライン参加者による情報交流会も開催いたしました。
【現地情報交流会】
5. 所感
研修会では有意義な時間を過ごすことができました。メンタル強化について知見を深めるとともに、グループワークでは書記を務め、みなさんの意見を聞きながらまとめをする練習もさせていただきました。あとはメンタル強化の訓練を普段の業務の中で行うのみです。ポジティブな言葉への変換や認知の自覚に心がけたいと思います。
研修参加の方々にも実践で試していただき、技術士のコンピテンシーを上げていくことの一助になればと切に願っております。
(修習技術者支援委員会オブザーバー(見習い) 今野貴文)