70周年記念全国大会 第4分科会開催報告

みなさん、こんにちは!

修習技術者支援委員会 委員長の阿部です。2021年技術士全国大会(創立70周年記念)が、去る11月25日に開催されました。私が参加した第4分科会について報告をいたします。

第4分科会のテーマは、「国際的通用性と日本の技術者の育成」 -『コンピテンシー』 一緒に考え 表現しよう- です。まず、基調講演では以下の話題を提供いたしました。

・技術士制度改革を、世界標準的な人材育成の考え方から捉え直す

・国際的通用性導入の経緯と、従来型企業も含め導入が進まない原因を分析する

・教育や医療における人材の育成等、導入が進む分野の事例を確認する

【基調講演1】:エンジニアの育成に向けた世界の動きと技術士制度の改革

池田 駿介氏: 東京工業大学 名誉教授

池田先生の基調講演では、以下のご説明がありました。

・技術士の置かれている環境の変化について

・日本の人材育成・活用の現状、技術士制度改革(国際化)の背景について

・IEA GA・PCや海外のプロフェッショナル・エンジニアのコンピテンシーをベースとした資格の獲得から継続研鑽までの事例について

・日本の技術士制度の問題とは?(CPD、IPDなど)

・これから目指すべき、国際的に通用する技術士制度構築について

技術士に求められるのは単なるモノづくりではなく、社会的課題解決であるとのことでした。

写真1 池田先生によるご講演

【基調講演2】:日本の大学におけるコンピテンシーベースの教育の現状と課題

松下 佳代氏:京都大学 大学院教育学研究科 教授

松下先生の基調講演では、以下のご説明がありました。

・コンピテンシーとは何か?(OECDの提言などの説明)

・コンピテンシーの本質的な特徴やコンピテンシーの三重モデルについて

・大学教育におけるコンピテンシーの育成・評価の枠組みについて、大学教育の質的転換、コンピテンシー評価の構図、コンピテンシーの育成・評価の課題など

・歯学部や工学部でのコンピテンシーベースの教育の取り組みの事例について、パフォーマンス評価の具体的な事例、アウトカムなど

コンピテンシーとは、ある課題などに対して「知識、技能、態度・価値観」の結集力で他者や社会と関り、行為・省察する能力とのことでした。

写真2 松下先生によるご講演

【パネルディスカッション】:未来の技術者の姿とは何か?日本の技術者の地位向上を目指して

基調講演後に行ったパネルディスカッションは、基調講演を受けて、これからの技術者のあ

るべき姿とは何かを踏まえながら、コンピテンシーの体現方法について分科会参加者の皆様

と一緒に考える場としました。

パネルディスカッションは、池田先生と松下先生に加え、日本技術士会 中部本部 倫理委

員会 委員長の比屋根均技術士と日本技術士会 統括本部 IPDWG委員の横井弘文技術士

にご登壇いただき、以下のテーマに沿って議論いたしました。

・テーマ1:「技術者の資質をコンピテンシーの観点から捉え直す意味について」

・テーマ2:「コンピテンシーを実装・体現するにはどうしたら良いか」

テーマ1では、比屋根様から、コンピテンシーとは倫理実践力である。倫理とは技術士は社

会からしてほしいこととしてほしくないことを理解し先読みして予防すること、すなわち期

待に応えることであるとのご説明があり、続けて池田先生から、技術者が社会の期待に答え

るため、自分の行動を判断するための基準が技術者倫理である、そして、その結果(アウト

カム)を自身で再度評価しさらに改善していくプロセスが重要であるとのご説明がありまし

た。

私は、社会とのつながりを持つ・意識すること、予防原則の考えで先読みする、そして、常

に結果を自己評価することが重要であり、コンピテンシーを理解する上で基本となることで

はないかと考えました。

さらに、比屋根様から文科省7つのコンピテンシーについて、エンジニアリング能力の構図

で、7つのコンピテンシーが連関して能力としてどのように発揮されるのか、何が足りない

のかを考え、必要なコンピテンシーを補うことが良い、そして、今後どうなるのか先読みし

た予防原則の考えを持たなければならないとのとのご説明があり、続けて横井様から、コン

ピテンシーは総合力である、全ての力がまんべんなくそろっている方が良いとのご説明があ

りました。

松下先生のご講演でもコンピテンシーの三重モデルのご説明がありましたが、私は、コンピ

テンシーとは結集力であり、コミュニケーションなどの各々の項目が連関している、コンピ

テンシーとは切り離して考えるものではないことに気づきました。

写真3 パネルディスカッション1

テーマ2では、横井様からIEA GA・PCのCPDは自由研究職務版で体系的で説明責任を

示すものと考えるとのご説明がありました。CPDは成果を挙げてカウントするのである。

ご本人が取り組んだマンションの管理組合での駐輪場の問題解決を、IEA GA・PCで記載

されている問題解決の範囲や活動の範囲などに当てはめて作成した実務エピソードのご説明が

ありました。また、IEA GA・PCで求められていることは技術的体験論文にそっくりであると

のことです。そして、松下先生から、日常にコンピテンシーを発揮、獲得する場面がある、さ

らに、コンピテンシーは新しいものではない。例えば、学生の時、授業の内容は覚えていなく

ても吹奏楽部などの部活動などは良く覚えていることがある、それはコンピテンシーというレ

ンズを通してみた時に、リーダーシップ、協同性、自分の専門技術の楽器演奏のこと、レジリ

エンスなど、活動の中にコンピテンシーが埋め込まれているからである。リーダーシップの考

え方も近年変わってきている、何らかの目標を掲げ、関係する人を集め、そして、実行してい

くことであり、日常の中にたくさんあるとのご説明がありました。

私は、コンピテンシーとは新しいものに置き換えるのではなく、我々がこれまでの普段の生

活の中でも無意識に発揮してきたものであり、まずは、それを整理することが重要ではない

かと考えました。

写真4 パネルディスカッション2

【最後に】

私は、人材育成で重要なのは制度と組織と人の三位一体であることだと考えました。世界的

にあらゆる分野で人材育成改革はこれからも発展し続けます。我々は社会の要求に答えるた

め、そして、自分の喜びのために発展し続けなければなりません。第4分科会に参加された

技術士、修習技術者の皆様、そして、本ブログを読まれている皆様が日本の未来を創ってい

くと期待しております。

基調講演及びパネルディスカッションにご登壇いただきました、池田先生、松下先生、比屋

根様、横井様、ありがとうございました。

以上

修習技術者支援委員会 阿部 修一