2024年3月度修習技術者研修会 開催報告

みなさん、こんにちは!
修習技術者支援委員会の名平です。

今回は、インフラマネジメントテクノロジーコンテスト(通称:インフラテクコン)
とのコラボ企画です。
会場とオンラインで、計80名を超える方々に参加して頂きました!

さて、インフラテクコンをご存知でしょうか?
インフラテクコンは公共インフラを対象に、
全国の高専生が様々な課題解決のアイデアを提案するコンテストです。
https://infratechcon.com/

日本技術士会では、インフラテクコン出場チームに技術士の視点で評価を行い、
日本技術士会賞を授与しています。

技術士会の各部会や地域本部から選出されたインフラテクコン審査メンバーによって、
IEA(国際エンジニアリング連合)のGA(Graduate Attributes)
及びPC(Professional Competencies)に基づいた、
多面的な審査を実施し、以下の3チームを選定しました。

  • こうそくどうろ救い隊(呉高専)
  • かんらん(高知高専)
  • かえってきた☆建設野郎&小町チーム(徳山高専)

そして今年度は、技術士会 特別賞を新たに設けました。
特別賞では「感動」を選考基準とし、何か1つでも特別に優れているチームに対して
将来への期待を込めて選定しました。

特別賞を受賞したチームは、水も滴るいい女(福井高専)です!

さらに、特別講演として、
チームぽんぽんぽんきちリブート1.1(旭川高専)の皆さんにも、
本研修会でのプレゼンテーションをお願いしました。

今回の研修会では、
こうそくどうろ救い隊(呉高専)、かんらん(高知高専)、
かえってきた☆建設野郎&小町チーム(徳山高専)、
チームぽんぽんぽんきちリブート1.1(旭川高専)の4チームに参加頂きました。

それでは、研修会の模様をお伝えしたいと思います。

開会挨拶

まず始めに、修習技術者支援委員会 片岡委員長の挨拶です。
インフラテクコンの概要と研修会の趣旨についての説明がありました。

片岡委員長挨拶

片岡委員長の開会挨拶

次に、インフラマネジメントテクノロジーコンテスト事務局 田村様からのご挨拶です。
インフラテクコン2023本選と技術士会賞との審査基準の違いや、
特別講演として旭川高専をお招きした経緯について説明を頂きました。

インフラテクコン事務局 田村様の挨拶

インフラテクコン事務局 田村様の挨拶

高専チームのプレゼン発表

1.呉高専:こうそくどうろ救い隊

最初の発表は、こうそくどうろ救い隊(呉高専)です。
テーマは、「高速道路リニュアル工事の大革命~Highway Bridge Renewal Innovation~」!

こうそくどうろ救い隊のプレゼン

こうそくどうろ救い隊のプレゼン

日本の高速道路は老朽化が進んでおり、
全国各地で道路の床(床版)を取り替えるリニューアル工事が進んでいます。

こうそくどうろ救い隊では、効率的に古い床版を撤去できる新工法を提案し、
企業と共同研究を行って、その有効性を検証しました。

今後は、実際の現場で活用できるか、橋のジョイント部などにも応用できるかなどについて、
さらに実験を進めていくとのことです。

質疑応答では、新工法採用においてトレードオフとなる項目についての質問や、
企業との共同研究の経緯や役割分担、新工法の効率化やコスト削減効果についての質問が出ました。

高速道路に限らず、全国の道路工事の現場で、
この新しい工法が使われる日も近いかもしれません。今後が楽しみですね。

2.高知高専:かんらん

2番目の発表チームは、かんらん(高知高専)です。
テーマは「産業廃棄物の再利用に関する提案」!

当チームは、工場で木型を製作する際に発生する産業廃棄物の再利用に着目しました。
この廃棄物は、木材と発泡スチロールが混合した状態となっています。

これをいかに効率よく再利用できるか、
(1)そのまま利用、(2)物理特性の分別、(3)化学特性による分別、(4)生物による分解という観点で検証を行いました。

最終的に4つの観点から計11個の方法について実験を行い、
分別精度/コスト/環境への負荷の観点で幅広い検討提案を行いました。

現在、企業や官公庁へ共同研究に向けた提案の準備を進めているとのこと。
来年度の活動を大いに期待したいです。

かんらんのプレゼン

かんらんのプレゼン

質疑応答では、今後の活動についての質問がありました。
来年度は、複数の解決策を組み合わせた実験や、コストダウンについて検討し、
実証実験に取り組むとのことです。

また技術士からのアドバイスとして、
企業や官公庁と共同研究していく上で、自分たちの得意なコア技術をアピールした方がよい
という意見も出ました。

3.徳山高専:かえってきた☆建設野郎&小町

3番目の発表は、かえってきた☆建設野郎&小町(徳山高専)です。
テーマは「いつでも、どこでも、何度でも。~知っちょる?現場、やっちょる?フラNavi~」です。

山口県内の建設業の人手不足や建設系学科学生の県内就職率の低迷という問題に対し、
県内の建設業の現場見学会などの情報発信が不足している点に着目しました。
そこで、産官学を連携させるポータルサイト:フラNaviを提案し、
県と協力して本格運用に向けた準備を進めています。

プレゼンでは、現在開発中のフラNaviベータ版でのデモンストレーションもあり、
学生の皆さんがどう利用するのか、具体的なイメージを掴むことができました。

かえってきた☆建設野郎&小町のプレゼン

かえってきた☆建設野郎&小町のプレゼン

質疑応答では、システム開発費用や山口県以外の他の自治体への拡大といった、
フラNavi本格運用開始に向けた取り組みについての質問がありました。

まずは最小限の機能に絞ってリリースを行い、
利用者の学生の意見を聞きながら段階的に進めていくとのことです。

本格運用開始は令和8年度を予定しているそうです。今から非常に楽しみです!

4.福井高専:水も滴るいい女(動画放映)

休憩を挟み、今回都合により参加できなかった、
水も滴るいい女(福井高専)のプレゼン動画を放映しました。
テーマは「今から晴れるよ」です。

本チームは、1年生が主体となって活動しています。
昨今、「数十年に一度の豪雨」と呼ばれる大雨が頻発し、
社会インフラを脅かしています。

そこで、現在の気象データから未来の降水量を予測できる、
確率降水量を用いた手法を提案しました。
これにより、未来の最大1時間降水量が予測できるとのことです。

水も滴るいい女の動画

水も滴るいい女の動画

動画放映後、審査チームのメンバーから講評を頂きました。
1年生主体のチームでありながら、統計学を駆使して、
きちんとデータ分析ができている点が審査員に驚きと感動を与え、
特別賞受賞につながったと説明がありました。

また、インフラ設計に活用するために、今後考慮すべき項目についても
審査員からコメントがありました。今後の活動に大いに期待したいです!

5.旭川高専:チームぽんぽんぽんきちリブート1.1

最後の発表は、特別講演です。
チームぽんぽんぽんきちリブート1.1(旭川高専)が登壇し、
プレゼンテーションを行いました。
テーマは、「A to D for 上下水道3Dプラットフォーム」です。

昨年のインフラテクコン2022では、技術士会賞を受賞したチームです。
今年度は大学院に進学した卒業生とも連携し、
旭川高専+豊橋技科大+北陸先端大学の連合チームとして活動を継続しています。

地中に埋まった上下水道管は、実際に掘り起こさないと
その位置を特定することができません。
そこで、紙図面とデジタル図面からの上下水道管の3Dデータを作成し、
AR機能を用いて現場で上下水道管の表示できる機能を開発しました。

この技術は水道管だけでなく、ガス管や電力線、光ファイバーなどの
地中インフラへと適用拡大することができます。
そして、インフラテクコン初の起業を目指して来年度も活動を継続するとのことです。

チームぽんぽんぽんきちリブート1.1のプレゼ

チームぽんぽんぽんきちリブート1.1のプレゼン

質疑応答では、遠隔地の仲間や後輩への情報連携のやり方、
システム構築において苦労した点、起業に向けた今後計画についての質問がありました。

このシステムは道路に埋設された配管類だけでなく、
ビルなどの建造物内部の配線/配管の位置を現場で特定することにも活用できます。
実際に現場で苦労した経験のある技術士からのコメントもあり、
このシステムがいかに期待されているかを実感できました。

各チームのプレゼンや質疑応答の様子をお伝えしましたが、
このブログだけでは、その素晴らしさをまだまだ十分に伝えきれていないと思います。

インフラテクコン2023出場全チームの動画は、
インフラテクコンのホームページにて閲覧可能です。
興味を持たれた方、ぜひ動画視聴もよろしくお願いします!

パネルディスカッション

続いて、技術士会賞受賞の3チームと技術士を交えたパネルディスカッションを行いました。
技術士のパネリストは、修習技術者支援委員会の片岡委員長と飯田委員です。

パネルディスカッションでは、インフラテクコン応募の動機やチーム名の由来、
インフラテクコンの活動を通して得られた知見や
様々な人々とのつながりをどう活かしていくのか、などの項目をお聞きしました。

パネルディスカッションでの質問項目

パネルディスカッションでの質問項目

パネルディスカッションの最後の項目、「技術士についての質問」においては、
会場参加の20代の技術士の方にも飛び入りで参加して頂きました。

実は研修会の休憩時間中に、高専出身であることを聞き、急遽参加をお願いしました。
世代的にも現役の高専生に近い立場で、技術士の魅力について語って頂きました!

高専生と談笑するパネリスト

高専生と談笑するパネリスト

パネルディスカッションは終了予定時間を若干オーバーしましたが、
大いに盛り上がったと思います。

表彰式

画面越しとなりましたが、技術士会受賞チームに表彰状を贈呈しました。
表彰状には、受賞チームの審査結果に基づき、受賞理由が一目で分かるサブタイトルがつけられています。

  • こうそくどうろ救い隊(呉高専)
    • インフラ課題解決のために複合的なアプローチ 高い問題解決能力
  • かんらん(高知高専)
    • 既存技術の学びの姿勢と新たな可能性への挑戦 高い継続研さんの意識
  • かえってきた☆建設野郎&小町(徳山高専)
    • 新しいアイデアと自発的行動力で産官学連携を図る 高いリーダーシップ能力
  • 水も滴るいい女(福井高専)
    • メンバーの目的と目標の共有化を実現した素晴らしいチームワークに感動

表彰状の授与の後、日本技術士会インフラテクコン審査チームリーダーの阿部技術士より、
各チームの審査結果からどのようにしてサブタイトルがつけられたのか、
その経緯について、講評を頂きました。

阿部リーダーによる、表彰状授与と講評

阿部リーダーによる、表彰状授与と講評

閉会挨拶

最後に、修習技術者支援委員会 石川副委員長に閉会挨拶を頂きました。

「技術士の立場から見ても、高専チームのプレゼンは非常に見応えがありました。
是非とも来年度も引き続き活動することを期待しています。
また、卒業される方にについて、是非とも技術士を目指してください。」

閉会挨拶をする石川副委員長

閉会挨拶をする石川副委員長

おわりに

私は昨年度に引き続き、今回も技術士会賞審査メンバーとして、
各高専チームの評価を行いました。

審査の際、各チームのプレゼン動画を何回も視聴しましたが、
今回の研修会で改めて各チームのプレゼンを聴くと、その素晴らしさを再認識しました。

来年度の活動に向けて、高専チームの皆さん、引き続き頑張ってください!
技術士/修習技術者の皆さんも、引き続きインフラテクコンへのご支援よろしくお願いします。

修習技術者支援委員会
名平 光宏