「今日皆さんに目指してもらいたいのは『ブルーオーシャンの世界です』。技術士になろうという人は技術力を持っていますから、コミュニケーション力がつけばレア(希少)な人材になります。そして人生は大きく変わります。そのための条件はたった1つ『行動』です。」
とても気持ちのこもった研修会のスタートです。
2024年1月13日(土)、会場&Webにて43名が参加し、話し方やコミュニケーションに関する講座で人気の原子力安全推進協会のパフォーマンス向上支援部部長の亀山雅司先生(技術士、原子力・放射線部門)をお迎えし、「業務遂行能力」 コミュニケーション研修会(2)が行われました。
1 研修テーマ
「ラポール(心の架け橋)」による会話方法です。
2 期待される効果
「ここが解決のポイントだ」 でも了解してもらえない!「これが大切だ」と話しても、上手く伝わらない。多くの技術者が「内容が正しければ認めてもらえる」と考えて「論理性」「説得性」に注力し、事態を悪化させますが、実際には「伝わる話し方」が必要です。
講義 → グループワーク・シェア → 感想を行い、スキルを身に着けます。
3 開始・進行
午後1時から森本委員の司会進行で始まりました。
4 開会あいさつ(片岡委員長)
研修の中で『なんのために?』という問いがあると思います。目的を考えた行動を選択してください。とご挨拶がありました。
司会進行と委員長挨拶
5 ご講演
講師は亀山先生です。修習技術者支援委員会では、毎年お話しいただいていますが、いつも人気の研修会です。
亀山講師
5.1 学習能力が上がる「ウオーミングアップ」
まず、ハートビートを行いました。Web参加の人はエアーで、「ハード・ビート」でエンジンをかけます。
ハートビート
5.2 今日の学びの目的
皆さん技術を持っています。しかしこの状態では皆一緒。一方で、コミュニケーションができる技術者はほとんどいない。これがブルーオーシャンです。今日コミュニケーションを身に着ければ大きな変化が得られます。必要なことはたった一つ。行動力です。
・コミュニケーションに才能は関係なし、適切な方法を知らないから目的にたどり着けない。目的に集中する話し方を身に着ける。
人の反応は、ほぼ決まっています。例えば、「勉強しなさい。あなたのためなの」という母親がいて、それを言われて「うん、わかったボク勉強する!」となった例がありますか?まずそうならない。このコミュのケーションの仕方では効果がないのです。さらに悪いことに、子供は親を嫌がるようになる。会社でも似たようなことがありますね。
害しかないこんな対応をなぜやっているのか?それは他に方法を知らないからです。今日の研修を実践すれば、子供が放っておいても勉強を始めるレベルまで行けます。
と始まりました。「子供が自然に勉強を始める」話し方・・・・興味津々です
5.3 技術者のコミュニケーションの課題の解決方法
多くの解決方法があるが、その中から本日は2つに絞ります。一つは「ラポール」(友好的に話をする方法)、および「合意」に至る方法です。業務の場面で友好的に議論を行い、最後に「合意」して会議を終えることができれば、OK。今日はこの範囲で学びます。
実際にコミュニケーションの困りごとには次のようなことがあります。
困りごと(1)コミュニケーションは重要だとよく言われる。気をつけろと言われるでも、どんなふうに関係を構築したらいいかわからない。自分には悪意もけんかする気も全然ないのに、うまくいかない。
困りごと(2)相手が何考えているのか、わからない。価値観が分からない。
ここで大切なことは、これらの困りごとを「解決した先に、何が待っているのか」です。具体的には
・仕事が早く終わって自由な時間が得られる。
・給料が上がる
・達成感や満足感を得られる などが待っています。
コミュニケーションができるようになれば、これらが手に入ります。
・実際にコミュニケーションを身に着けて「変わった」例
講師の天沼さん、白瀬さんからコミュニケーションを学んだことによる変化をお話しいただきました。お二人とも困り果てた挙句、亀山先生にたどり着いたそうです。「無理難題をいう上司を何とかしてほしい」、「つらく当たてくる部下を何とかしたい」と。そしてラポールを身に着けた今は、「友達」になったそうです。
さあ、早く教えてほしい・・・前のめりになっていました。
5.4 ワーク、練習
「コミュニケーションを学ぶ動機はなにか、をシェアする」
会場では2人ペアとなり、Webでも2人ペアとなりコミュニケーションを学ぶ動機と研修に参加した理由をお互いにシェアします。正解はありません。聞いた感想を30秒程度、心に浮かんだことをなんでも口に出します。本日何を学んで、何を得たいのかを明確に言語化しておくことは極めて大事です。
会場でのワークの様子
最強の話し方スキル、「ラポール」を身につける
「知らず知らずに私たちは『ケンカを売っている話し方』をしています。」とのことです。・・・これは困る。本意ではありません。
「技術士資格をとって『こうやったらいいですよ』と話すと、たいていの人は『カチン!』ときます。しかしコミュニケーションの仕方を変えるとその逆も起きます。『全力で応援するよ』と。劇的に、1週間ぐらいでこのように変わります。」・・・ぜひ、そうなりたい!
さて、ラポールの話し方とは・・
人は、何回もお話ししていれば、普通に仲間になれます。でも初めて会った瞬間に友好的になりたいものです。そのポイントは3つです。
- 目を見る (ワークでは、じゃべったりせず、しっかり1分間目をみます)
- 笑顔 理想はミッキーです。
- 相手の話にうなずき。鳩になったつもりで大げさなくらいうなずく。
・・・これならできる!ような気がする。
自分のためか?相手のためか?・・・相手のために言葉をかける
言葉にする、口に出す。そして存在自体を認めてほめることが重要です。
相手を説得したいがためにラポールを作る←無駄です。そんな人と仲良くしたくないと相手は本能的に気づきます。相手からの見返りを手放してください。「『あなた』にとって一番良いと思うことを選択してほしい、そのために私が持っている情報をシェアしたいんだ」、との姿勢が重要なのです。そうしたら世の中不思議なことが起こります。完全に自分を手放したら、うまく回りだします。
子犬ちゃんになれ! 自分を守らないコミュニケーション。これが一番大事です。
さて、そうはいっても、技術者として違うことは違うと指摘しないといけないし、しかし、「嘘はついちゃダメ、それ違うぞと相手を攻撃する言葉もダメ。」ではどうするか?
その対応方法を含め、このあと、次のような講演とワークが進み、コミュニケーションについての多くの習得がありました。
・内容ではなく「事実」に同意する
・目的に集中する
・目的がさだまったら「方法」は相手の価値観で
・目的を見極める 合意をとる ワーク
最初、参加者はぎこちなくワーク・シェアに取り組んでいましたが、だんだん慣れてきて、ワークにのってきました。(ごめんなさい。とてもためになる学びが続きますが、文書のボリュームの関係で割愛しております)
6 学びのシェア
研修の最後に、参加者同士で今日の学びについて、シェアしました。印象的だった主な学びは、
- 「会話は相手のためであって自分のためではない。まして自分の知識を披露するためではない」
- 「正しく伝えると同意・納得してもらえる」と思っていたが、これは間違いとわかりました。
- 「目的に集中する」目的を考え発言・行動する・目的以外はどうでもよい、とよく理解できました。
でした。
7 感想
亀山先生ご自身のつらい経験に基づき見出されたコミュニケーションの神髄について、とてもわかりやすくお話しいただき、大切な気づきの多い講演に感銘いたしました。そして、そのコミュニケーションの技術を整理して理解できる形で伝えていただきました。さらに参加者同士でワークをすることにより、明日から使える実践的な気づきを多く得ることができました。
「ちょっとうれしかったこと」「うなずき、あいづち」などの、雑談と思っていましたが、ラポールの第一歩としてとても重要だと理解できました。本日の研修に参加して、覚悟を持って相手の気持ちに寄り添うことを実践してまいります。
8 閉会のあいさつ(名平副委員長)
閉会は、名平副委員長より、「今日一日お疲れ様でした。ワークが多かったですが、次週の月曜日から実践していただければと思います。」とのご挨拶をいただきました。
名平副委員長
9 最後に
コロナのころにはできなかった集合研修ですので、記念に会場参加者で写真を撮りました。
会場での集合写真
このあと、修習技術者による発表研究会、その後有志で先生を囲み情報交流会を行いました。
最後に
研修会会場入り口で小塚委員(金属)、大西委員(経営工学)がお出迎えされました。
修習技術者支援員会の研修は手作りです。入口でお迎えされたお二人とも素晴らしい技術士です。ただ受付を済ませるだけではもったいない。名刺交換をしたり、いろいろと質問をしたり、人脈を広げるチャンスにしてください。
左:大西委員(経営工学) 右:小塚委員(金属)
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
修習技術者支援委員会 委員補佐 木村昌智
修習技術者(農業部門)