2023年6月度修習技術者研修会 開催報告

みなさん、こんにちは!修習委員の石黒です!

2023年6月11日に修習技術者研修会は、資質・能力向上「他人に理解される論文の書き方」が行われました。講師は数多くの技術士二次試験の参考書などを執筆されている、福田遵先生(福田遵技術士事務所代表)です。

今回は機械振興会館とオンラインのハイブリット開催で、参加者は準会員限定であったにも関わらず、合計57名ものの方々にご参加いただきました。今回の研修は内容が「論文の書き方」なだけに、ブログの作成も緊張が走りますが、学んだ内容を生かしてみます。

熱気溢れる会場の様子

真剣な面持ちのオンラインの様子

  1. 開会挨拶

まず始めに、阿部委員長より、開会のご挨拶をいただきました。阿部委員長からは「今回の研修では、2つの事を理解してください。1つは技術士の試験に限らず、文章作成能力はエンジニアリング業務の基本中の基本である。もう一つは文章の作成はコミュニケーションだけではなく、8つのコンピテンシー全てに関わってくる総合力です。そういったことを念頭に学んでいただきたいと思います。最後、私と委員数名は今回の研修で退任になり、来月からは片岡新委員長のもと新体制になりますが、技術士を合格するまで引き続きよろしくお願いいたします。」

日本技術士会 阿部委員長

2.講演「他人に理解される論文の書き方」

続いて、福田先生による講演が行われました。

まず、福田先生の自己紹介、本業での業績と技術士としての活動履歴が紹介されました。1991年に技術士取得され、技術士の知名度向上や試験制度の改革に取り組まれてきた話は、まさに技術士の歴史ともいえ、序盤から非常に興味深いです。

講師 福田先生

自己紹介の後、講習会の本題に入ります。

まず、論文を作成するための基本として、コンサルが顧客に提案する資料が評価されない理由、技術者が陥りやすい落とし穴が説明されます。一言で言うと、「彼(てき)を知り、己を知れば百戦あやうからず」だそうです。孫氏の言葉ですが、「彼」は対象の目的で、仕事であれば顧客です。「己」は論文力、経験の深さです。これを、今回は技術士試験を対象として、説明されました。

「彼」の知り方を、技術士の各問題に対して、採点基準や試験制度が改正された裏話なども含めてわかりやすく説明されていきます。試験官や技術士制度をつくる立場だった方からの「彼を知る」説明は、「試験制度の変更や、試験要綱の文章の意味は、こんな背景があったのか!」と、目から鱗が落ちていきます。ただ、「試験に関する情報が公開されているのに、合格率が上がらない理由がわからない」など、私を含め既に技術士である委員ですら心を抉(えぐ)られるような厳しい発言がちょくちょく挟まれます…。

そして、休憩の前に、会場参加の方限定で、突如福田先生の著書のじゃんけんによる争奪戦が始まりました!見事、2名の方が技術士(機械部門)の参考書を入手しておりました。この参考書で、技術士合格を目指してください!

福田先生の著書争奪戦

3.論文の書き方実習

いよいよ、論文の書き方の実習です。各例題に対して5分程度考えた後、代表者が回答するという、授業のような実習です。

例題1 「この文章をわかりやすく書き直せ」

読点の付け方で意味が変わってくる例から、意味を理解して打ってあげる重要性が説明されました。具体的に句点を打つ目安の文字数、150字法などが解説されました。

そして、「この文章をわかりやすく書き直せ」という例題が出されました。例題はなんと13行の1文!気候変動?経済?もはや何の話をしたいのかもわかりません。感情的に「読みたくない!」と思う文章を読む立場になり、嫌でも「決してこんな文章は書くまい…」という気持ちになります。

例題2 「この文章の主語は何でしょう?」

ここで「自然環境は…」で始まる文章が提示されました。実は文章の大事なところは後半にあり、その後半の文章では、主語が省略されています。代表して回答した方は、ひっかけ問題にもひっかからず、「私たち」「技術者」と答えておりました。この例題の大事な点は、文章を書くときは、主語を省略してもよいが、常に主語を意識することです。読み手に主語を考えさせる文章は、もれなく読み手をイライラさせます。

例題3 「Yes, But法またはNo, But法を使ってみよう」

物事を強調した文章を書きたい場合は、Yes, But法またはNo, But法が有効です。文章がうまく見えて、読み手の印象がよくなるようです。ここで、「再生可能エネルギーは不安定」「2050年にカーボンニュートラルを実現させる」など、エネルギーに関する条件がいくつか挙げられました。これらの条件を、Yes, But法またはNo, But法を使って文章をつくってみます。

例題4 「この文章に接続詞を加えて、読みやすい文章にせよ」

「接続詞を有効に活用とする」をテーマに、まず接続詞が全くない文章が提示されました。実習の後、福田先生から、数日間かけて作成したという超大作「よく使う接続詞一覧表」が示されました。重ねて示す場合、逆説的に示す場合などの接続詞が示され、この中から2,3個覚えて使う方法が有効であるようです。

例題5 「『また』を多用している文章を、いろいろな接続詞を使って、書き直せ」

1つの文章の中に、3回も「また」が登場する文章が提示されました。重ねて示す場合の接続詞でも、同じ接続詞を使わないことによって、協調効果があります。確かに「また」ばかりの文章は幼稚な印象があります。

例題4,5で先生が伝えたかった重要なことは、「接続詞を甘く見ない事」。接続詞の使い方で文章が引き締まってきます。

例題6 「次の文章の『こと』を置き換えよ」

最初に「なんでも『こと』でごまかさない」と、「こと」にも様々な種類がある説明がされます。単語をきちんと使う、「こと」がいらないこともあります。9割は「こと」には何かの単語が入るそうです。

そこで、9個の「こと」が入る文章が例題として提示されました。やってみるとなかなか難しいですが、作成した文章はわかりやすくなった気がします。

最後に、自分の業務フローを作る演習、宿題があり、改めて修習技術者へ激励がありました。受講者からの質疑応答の後、濃い講演会は終わりました。

  1. 閉会挨拶

 片岡副委員長より、閉会の挨拶を頂きました。「文章の書き方のポイントは技術士試験だけではなく、企画書や提案書を作るときなど、日常の業務を通して使ってください。本日はありがとうございました。」

修習技術者支援委員会 片岡副委員長

会場の参加者で記念撮影

5.最後に

今回の講習会は、技術士試験だけではなく、仕事でも一生使える文章術と思いました。研修後には、開会の挨拶で阿部委員長が言っていた「文章の作成は全てのコンピテンシーに関わってくる総合力」という意味も納得できます。

とは言っても、接続詞の語彙など、すぐに身につくものばかりではないので、研修で学んだ内容を意識し、少しずつレベルアップしていきたいと思います。

ちなみに今回のブログも、草稿作成後、「こと」を検索して、できる限り他の単語に置き換えて作成しました。