2021年10月度修習技術者研修会 開催報告

みなさん、こんにちは!

修習技術者支援委員会 委員の杉山です。

10/9(土)に、10月度の修習技術者研修会をオンラインで開催しました。

今回のテーマは技術士に求められるコンピテンシーの1つ、「問題解決」です。業務で直面する複合的な問題に対して、問題内容の理解、原因の仮説とそれを検証する分析の過程、解決策の立案とその影響度による優先度付け、実施手順まで、まさに目の前にある問題をどう解決していくか、その道筋を講師の事業事例を交えて説明いただきました。講義の前半は“問題点の特定とメカニズムの分析”、後半は“対策立案と実行計画”に分けて、グループワークと発表もこれにあわせてそれぞれ2回行いました。短い時間の中でアウトプットをまとめるのは厳しかったと思いますが、参加者が真剣に取り組んでいる様子がうかがえました。

いよいよ阿部(真)委員の司会のもと、研修会が始まりました。

1. 開会挨拶

まずは阿部委員長から開会の挨拶がありました。

今回は講師の方が若くして独立した経験をお持ちで、その実経験ならでは視点で問題解決の話が聞けます。また問題解決に重要なのは問題が起きてからでなく起こる前に発見することで、そのために“仮説を立てる”ことが必要で、皆さんが今日それを学び、今後は自分の業務に活かしてほしい」との話がありました。

本委員会 阿部委員長

2. 講演(前半)

続いて、阿部(真)委員からWeb研修参加での注意事項の説明を行った後、大薗講師のご講演が始まりました。一般企業で勤務後、30代で技術士事務所を開業して独立されたということ。さすがに経験豊富で経歴の紹介から語りたいことはたくさんあるという様子で、一つ一つの説明にも熱がこもっていました。

大薗講師のご講演

大薗講師から今日の一番いいたいこと、問題解決のポイントの3つの話がありました。私も改めて自己の成長に意識しなくてはならない、大事なことだと認識しました。

①得意でない分野、難しい問題に対して、回避せず自分から立ち向かう

②問題をどうさばくか、チームとして誰がやるか等、色々なことを考え実行する

③問題解決に役立つ手法を積極的に学習し、それを活用する

そのうえで、自身の能力向上のために問題解決を意図的に取り組むことが重要で、そのことは結果として組織に貢献することになる、ということを強調されていました。企業人も個人で独立してもこのような姿勢は同じだということです。

3. グループ討議と発表(1回目)

前半の講演を終えて、6グループに分かれてグループ討議に入りました。今回の課題は“欠陥を減らして良品率アップ”です。大薗講師から準備いただいたワークシート①問題点の特定とメカニズムの分析を使い、1回目のグループ討議のためブレイクアウトルームに分かれました。ブレイクアウトルームではお決まりの自己紹介からはじまり、リーダー・発表者・書記・タイムキーパ・質疑対応の役割を決めて、いよいよ討議です。今回は私もファシリテータとしてグループ討議に参加しました。

まず与えられた課題の認識、そしてここでの検討内容をメンバで共有します。課題資料には工場長と現場担当者のヒアリングメモが箇条書きに提示されているだけなので、私が担当したグループでは大薗講師から紹介のあったプロセス把握のステップも取り入れました。工程情報として人や設備のリソースの配置やヒアリングから気になる点を洗い出し、記載していくことでメンバ間での解釈を共有し、問題の要因を膨らませていきました。

和やかかつ真剣なC班グループ討議の様子

1回目のグループの発表内容は、必要な情報は何か、問題発生要因の仮説をたてそれを検証する実施方法を考えるステップです。実検討時間はおよそ30分でしたが、与えられたワークシート①に記載した内容に基づき、上手く説明しており、新たな気づきをもらうのなどして私にとっても勉強になりました。質問では、“なぜその考えにいたったのか?”、“こういう話題はでなかったのか?など、設備・液剤・作業・治具のさまざまな視点からいつもより多くの質問があり、全体討議の雰囲気も活発に進みました。

前半のグループ発表が終わったところで阿部委員長から、突っ込みのコメントが入りました。「仮説についてはヒアリングにでてこない内容、裏に潜んでいることまで考えて欲しい。例えば自動化機器の精度に関しては制御プログラムやセンサーなど関連する項目も取り入れる、など後半の討議では幅広い視点をもって捉えて欲しい」ということです。これは参加者に気づきを与える、貴重なアドバイスであったと思います。

4. 講演(後半)

後半の講演では、問題解決型のQCストーリーとそこで活用する手法の説明がありました。アイデアの発想段階では“オズボーンのチェックリスト”、“TRIZの40の発明原理”、“SCAMPER 7つの観点”、対策立案アイデア出しでの“ブレーンストーミング”、対策決定での“メリットデメリット表”による優先順位、実行内容を整理する“マインドマップ”・アクションプラン等々、各種手法や進め方を説明いただきました。問題解決のストーリーを正しい方向に後戻りなく、そして効率的に進められる、大薗講師のお話は私にとってもお手本となり、次の問題解決の場面ではしっかり教えを守っていきたいと思いました。

5. グループ討議と発表(2回目)

2回目のグループ討議ではワークシート②対策立案と実行計画を使いました。ワークシート①から発生メカニズム仮説から1つ重要だと思われるアイテムを選択し、その対策案・メリットデメリット・対策案の優先順を決め、最後にアクションプランを策定します。1回目に続いて同じメンバで討議を続けて、与えられた時間に集中してワークシート②にアウトプットをまとめました。

和やかかつ真剣なF班グループ討議の様子

2回目のグループの発表です。グループごとに選定した欠陥発生メカニズムの仮説を取りあげて対策立案から実行計画までプレゼンテーションが行われました。発表では洗浄液の見直し、ホルダー対策(摩耗・老朽化・変形)、ロボット精度の改善、など多面的な視点でさまざまな仮説とその対策案がグループからでていました。いろいろな仮説が挙げられたこともあって、発表に対する質疑では多くの方から手があがり、活気あふれる雰囲気で全体討議は進みました。質問には、“優先順を決めた際の考え方は?”、“デメリットとして取りあげた理由は何か?”などワークシート記載に至った経緯について、聞きたいという内容が多く見受けられました。これは参加者が今回のグループ討議で真剣に取り組んできたからであると思いました。

6. 講評

最後のグループ発表が終わり、大薗講師から講評をいただきました。前半は「必要なデータを多面的にあげてもらったのは非常によかった。このように不足データが何か発見し、調べていく力を養ってほしい。」、「結果発生のメカニズムの記述では、聞いた人がその様子を同じくイメージできるぐらい具体的な記述すること」さらに「仮説に対しての検証では、それらが論理的につながっていることが大事である」とのお話がありました。後半については「対策は4Mの視点、経営や組織面でも捉えており、いろんな視点で考えられたのは非常に良かった」、「データ取得など初期にできることが対策に入ってしまうことがないように注意してほしい」とのことでした。

今回の討議では時間制約で、しっかり考えぬくこところまでは到達しきれなかったことは残念であったが、改めて解決ストーリーのステップ一つ一つを着実に進めていくことの難しさを感じました。

7. 閉会挨拶

片岡副委員長から閉会の挨拶です。「日常の業務の中でこのような問題解決能力を身につけるために、ぜひ学んだツールを使いこなしていただきたい。これらのツールを意識して実際に業務で生じる問題に積極的に活用することで自己の問題解決能力を向上させて欲しい」とのお話がありました。

本委員会 片岡副委員長

8. お知らせ

最後に11月25日から開催される2021年技術士全国大会について阿部委員長より紹介がありました。第1分科会から第5分科会に分かれて各委員会からこれまでの取組みについて発表があります。阿部委員長の第4分科会では「国際的通用性と日本の技術者の育成 “コンピテンシー”を一緒に考え、表現しよう」をテーマに基調講演とパネルディスカッションを行います。2000年から始まった技術士制度の改革について説明したうえで、なぜコンピテンシーが重要なのか、コンピテンシーとは具体的に何か、を一緒に考える場であり、非常に有益な内容を準備している、ここに参加すればコンピテンシーの理解が進むので、ぜひ参加いただきたいとの話がありました。

2021年技術士全国大会(創立70周年記念)|公益社団法人 日本技術士会 (engineer.or.jp)

今回参加すると技術士に求められるコンピテンシーの理解が進むということですので、これはとてもよい機会です。これまで一貫した説明を聞いたことがない、という方には特に参加をお勧めしたいと思います。

以上

修習技術者支援委員会 委員 杉山 尚美