2022年10月度修習技術者研修会 開催報告
みなさん、こんにちは!
修習技術者支援委員会 委員の小塚です。
10/8(土)に、10月度の修習技術者研修会をオンラインで開催しました。
今回のテーマは「行動原則 技術者倫理」です。
本研修の目的は、技術者倫理の新しい方向性である「志向倫理」について学びました。
本研修会では、新しい時代の技術者に求められる「予防倫理」と「志向倫理」について講義を通じて考察するとともに、Well-beingに関する最新の科学的知見について学びました。また、日本工学教育協会技術者倫理調査研究委員会が中心となって制作された映像教材「Wake up!-エンジニアになりたいきみへ-の視聴とWell-beingについてのグループワークを行いました。
1.開催挨拶
最初に阿部委員長から開会挨拶がありました。
「本日のテーマは技術者倫理です。なぜ技術者倫理が重要なのか、講演を通して改めて考えてみましょう。グループディスカッションでは自由な発想で臨んでください。今日の研修会で得られた気づきを大切に今後の技術者人生に役立ててください。」
技術者倫理について、特に意識せず、無意識的に行動してることが多いのかなと感じますが、本研修を通じて倫理の重要性を改めて感じ、今後につながっていけば良いと感じました。
本委員会 阿部委員長
2.講演「新しい時代の技術者倫理-個人と社会のWell-beingを目指して」
早稲田大学 大学総合研究センター 教授である本日の講師 札野 順先生よりご講演を頂きました。
札野先生の自己紹介から始まり、技術者倫理の必要性が求められるようになった背景の説明を頂きました。
続いて、技術者倫理では、「安全・健康・福利」を最も重要な価値として捉え、コストや技術革新、環境への配慮等、さまざまな価値のバランスをとっていくものとお話を頂きました。
倫理には「予防倫理」と「志向倫理」の2つの倫理があり、従来の倫理は「予防倫理」、これに対して「思考倫理」は、技術者がさらに良い行動、より良い行動を創っていくための倫理であることについて詳しく説明を頂きました。
次に「志向倫理」の中でも中核となるWell-being(良く生きる)について詳しい説明がありました。
そして、豊かさの指標として、OECD(経済協力開発機構)が公表している人生満足度指標(Better Life index)の紹介がありました。
最後に「技術者倫理2.0」の説明がありました。この基本原則は、公衆の安全、健康、福利(Well-being)への貢献を行うことであり、倫理的に仕事を行っていくことで、さらなる社会貢献ができるだけでなく、自分自身も幸せになることができると教えを頂きました。
予防倫理については一般的に使われる倫理であると思いますが、志向倫理、特にWell-beingについて、とても理解しやすいご説明を頂きました。志向倫理によって社会貢献だけでなく自身の幸せにつながること、直ぐにでも実践したくなる内容でした。
講師 札野 順 先生
具体的な事例を交えた説明は分かり易く、リスクマネジメントの概要が理解できる講演であったと思いました。
3.映像教材の視聴
日本工学教育協会 技術者倫理調査研究委員会様が作成された「Wake up! -エンジニアになりたいきみへ-」の映像教材を会場から配信して参加者全員で約30分視聴しました。具体的な内容は割愛しますが、学生時代から新入社員の間で、自分がやりたいことの模索、仕事のやりがい(楽しみ)についてのストーリーになっており、昔の私自身も当時を振り返ると同じようなことを考えていたのかなと感じながら今なら違った考えになっているなと改めて考える機会になりました。
4.グループディスカッション
5~6名程度のグループを8グループつくり、Well-beingについて、「自身のWell-beingに最も大きな影響を与えるものはなにか」と「社会のWell-beingを高めるために技術者は何ができるか」の2つのテーマでディスカッションを行いました。
A班のグループディスカッション状況
B班のグループディスカッション状況
C班のグループディスカッション状況
D班のグループディスカッション状況
E班のグループディスカッション状況
F班のグループディスカッション状況
G班のグループディスカッション状況
H班のグループディスカッション状況
5.グループディスカッション発表
時間の関係上、全てのグループの発表を行うことができなかったので、A班、B班、H班の3グループのみ発表を行いました。発表内容を以下に記載します。
A班
「自身のWell-beingに最も大きな影響を与えるものはなにか」
→ 技術者として喜んでもらえること
「社会のWell-beingを高めるために技術者は何ができるか」
→ 発信者としてのコミュニケーションと周囲を巻き込む力が必要
A班の発表状況
B班
「自身のWell-beingに最も大きな影響を与えるものはなにか」
→ 自分の行っている仕事が賞賛されることで達成感を感じられる。
「社会のWell-beingを高めるために技術者は何ができるか」
→ 安全、健康、福利に貢献できる新しい技術を生み出すこと。
Well-beingを周囲に伝えていくこと。
B班の発表状況
I班
「自身のWell-beingに最も大きな影響を与えるものはなにか」
→ 自由、コミュニケーション、ワークライフバランスが大切。
「社会のWell-beingを高めるために技術者は何ができるか」
→ 公衆を含む技術を使う人に対して良い側面と悪い側面を含めてしっかりと情報を発信する。
技術者として社会の変化を受け入れる。
I班の発表状況
発表頂いた全ての班で共通して、自身のWell-beingに最も大きな影響を与えるものとして、人から褒められること、喜んで貰えることを挙げられていました。自分が嬉しく感じることがWell-beingにつながり、他の人にも幸せを与えるといった良い循環につながるのかなと感じました。また「社会のWell-beingを高めるために技術者は何ができるか」のテーマに関しては各班色々な考え方がありました。やはり社会全体のWell-beingを高めるには色々な考え方があるので、参加された方が自身で考えられていることだけでなく、多くの考えを知ることができ、良いディスカッションになったのではと感じました。
6.講師講評
どのグループも他の人の役に立てたことことで得られたことが自身のWell-beingと発表されていましたが、これはPERMAモデルのM(Meaning 人生の意味や意義の自覚)に相当し、自分自身がWell-beingの状態であるかを俯瞰することが重要であると解説を頂きました。補足としてIEEEが取り組まれていることで、2019年にAIを開発していくためにまとめられた8原則の中の2番目がWell-beingであり、「社会のWell-beingに貢献したか」がAIの評価指標となっています。
最後に倫理(特に志向倫理)的な知識と判断能力は自己の存在意義に関わる中核的な資質能力であり、個々の専門知識と専門技術を動かすための基礎であるとの説明を頂きました。
7.閉会の挨拶
修習技術者支援員会の片岡副委員長から閉会の挨拶を頂きました。
なぜ技術者倫理が重要なのか、今回の研修を通して気づくことができたでしょうか。そして、自分がこれまで考えていた技術者倫理と、本研修で得られた技術者倫理の違いは何かを改めて考えて欲しいです。私自身の感想としては、技術者倫理が中核的なものであることが、今回の研修で札野講師から直接話を聞くことで得られたと思います。
本委員会 片岡副委員長
以 上
修習技術者支援委員会 委員 小塚 隆