2022年2月度修習技術者研修会 開催報告

みなさん、こんにちは!

修習技術者支援委員会 委員補佐の新海です。

2月12日(土)に、2月度の修習技術者研修会を開催しました。今回は新型コロナウイルス感染拡大の影響により、オンライン参加のみで開催しました。

今回のテーマは「地方活性化と5G」です。地方の多くは人口減少もあり、衰退しています。また、5Gは携帯電話で使われてきた最新の通信システムです。研修会では、冒頭の講演で地方と5Gについて考えるきっかけを与え、事前課題でまとめた問題点と、参加者自身の技術部門と5Gをからめた提案について2回のグループワークを通じて議論・発表しました。

全体的な感想としてグループ討論にて積極的な議論が行われた結果、各グループがテーマに沿った多くの問題点と5Gに関連した課題解決策の提案を実施し、私自身が事前に考えていた内容と比較しながら楽しみながら学ぶことができました。

1.阿部委員長より挨拶

最初に阿部委員長から、開会挨拶がありました。

「”特定の国・地域に関する知識の理解と応用”は、初めて本研修で取り扱うテーマである。そのテーマに対する講師を永澤委員に依頼した理由は、国際エンジニアリング連合(IEA)に記載されているためである。国内でも、地域活性化としてどうやって技術士が関与できるか想定しながら進めていってほしい。講師の永澤委員は宮城・仙台から、阿部委員長も茨城・鹿島からそれぞれリモート接続で地方より参加している。東京や地方を問わずに日本を盛り上げてみようという志を持って参加してほしい。」

 

本委員会 阿部委員長

2.講演

最初に、講師の永澤委員から、研修会の目標(アウトカム)について話がありました。最初の講演は飽くまでもきっかけを与えるに過ぎず、メインはグループワークです。地方の現状を理解し、参加者同士で5Gの無線技術を絡めた解決案について話し合うことで、以下の2点を目指すというのが「アウトカム」です。

・地方の危機を喫緊の事態と捉え、自身の技術と最新技術を応用 して取り組めることに気づく。

・他部門の技術を自部門に引き寄せ、他部門と協調する意識を持つ。

まず、講師本人の自己紹介がありました。続いて、地方の実状について、人口減少、高齢化および出生数について、表やグラフを用いた説明がありました。人口では大都市圏以外の減少、高齢化では約25年後に地方では65歳以上人口が40%以上、そして出生数では東京都以外の都市部も減少という内容でした。これらにより、労働力の減少、伝統産業の消滅および都市の消滅が予測されると説明がありました。

地方の実状に対する国の取り組みとして、まち・ひと・しごと創生法が平成26年11月に成立し、その目的の説明がありました。また、地方自治体の取り組みとして、宮城県亘理郡山元町の事例がありました。

続いて、5Gについての基礎的な概要説明がありました。アナログ方式の車載電話(1979年)から数えて第5世代目にあたることから5Gという説明がありました。また、5Gの主要性能として、「超高速・大容量」、「超低遅延」、「多数同時接続」の説明があり、それぞれの性能に関する関連技術の説明がありました。

最後に、5Gの活用ケースについて製造工場の現場作業自動化・遠隔支援および隊列走行時におけるトラックの自動運転実証実験という二つの事例の説明がありました。

講師:永澤委員(技術士、電気電子部門)の講演

私の感想として、2020年のデータなので2021年にはさらに人口減少が激しくなっていると思いました。また、トラックの自動運転実証実験については割り込みやあおり運転、そして隘路における対向車とのすれ違いでも実証可能かどうか疑問に思いました。

3.グループ討議と発表(1回目)

講演を終えて、いきなりという感じではありましたが、AからFの6グループに分かれて、グループ討議に入りました。今回の課題は「地方の課題抽出と取り組み案の検討」というものでした。制限時間70分で参加者自身に関係する地方・地域の問題点を挙げ、グループとしての意見を発表向けにまとめました。

グループ討議では、自己紹介からはじまり、リーダー・発表者・書記・タイムキーパを決めて、いよいよ討議です。今回、私も参加者と同じ立場でグループ討議に参加しました。

1回目のグループワークは70分でしたが、私が参加したAグループでは、各参加者が挙げた地方・地域の問題点から内容のグループ分けを行い、発表向けにまとめました。思っていたよりも時間的に短く感じられました。

その後、各グループからの発表では、以下の通り、多くの地方・地域の問題点の説明がありました。

Aグループ:行政サービス、担い手不足、環境問題および環境整備の四つに分類。

Bグループ:地方ではデジタルインフラの安定運用が困難。労働者不足、高齢者の運転危険性等。

Cグループ:高齢化による人手不足。セカンドキャリア等。

Dグループ:独居老人の見守りサポート。生活支援者不足、インフラ整備等。

Eグループ:農業従事者の担い手不足等。

Fグループ:団地住民の高齢化。後継者不足。地場産業に魅力がない等。

Aグループの1回目の発表内容

4.グループ討議と発表(2回目)

1回目の発表を終えて再び、AからFの6グループに分かれて、グループ討議に入りました。1回目の発表内容を基に課題を抽出し、参加者自身の技術部門と5Gを絡めた課題解決策について提案し、議論しました。制限時間は当初60分を予定していたが70分へ10分間延長の上、グループとしての意見を発表向けにまとめました。

私が参加したAグループでは、1回目の発表で説明した内容から行政サービスに絞って解決策を提案し、それを実施した際に発生する新たなリスクまで意見を出し合い、発表向けにまとめました。思っていたよりも時間的に短く感じられました。

その後、各グループからの発表では、以下の通り、多くの課題解決策の提案についての説明がありました。

Aグループ:行政サービスの課題に対する解決策および実施に伴う新たなリスク。

Bグループ:安全確保(高齢者による危険運転の防止、判断能力低下に対する支援)。

Cグループ:高齢化による人手不足の解消(若年・高齢者の活用)による波及効果とリスク。

Dグループ:通信・コミュニケーション速度の向上による独居老人の見守りサポート・心のケア。

Eグループ:地方活性化のための農業。労働力の省力化等。

Fグループ:生産性向上。情報共有の効率化。知名度向上。農機具の自動化(IoT、AI等)。

Aグループの2回目の発表内容

グループ発表が終わり、阿部委員長から以下の講評がありました。

「検討資料をたくさん挙げたのは良かった。しかし、発表時間が3分と決まっているため、その時間内に収めるように発表することも研修の一環であることが大切である。また、本当に「アウトカム」であることを示すには質疑応答が重要であるため、発表時間が長いと質疑応答が短くなってしまうのでそのことを意識してほしい。」

講評の後、講師自身がグループワークの解答例を紹介しました。地方の課題として、関係人口を増やすことが大切であること。そして、取り組み案(他部門との連携策)として、電気電子部門と機械部門との連携で伝統工芸品の作成を、低遅延の遠隔ロボットアームを活用し体験する。それにより後継者獲得につなげていく可能性もある、と説明がありました。

私が参加したグループ討議と発表について、自身も事前課題を実施し、それを基に討議に加わりました。Aグループのメンバー全員が問題点を多く挙げ、制限時間いっぱい使って議論し、書記の方に纏めていただき、発表者が要領よく説明したことに感動しました。

5.閉会の挨拶

最後に、片岡副委員長から閉会の挨拶として、以下の通り講評を頂きました。

「今回の研修会では技術士が社会的な課題に対して新たな気づきや多くの視点が得られたと思っています。特に社会的な課題解決について一番重要なのは仲間作りであると思っています。本日の研修会で得られた視点を大切に、能力向上に努めてほしい。」

本委員会 片岡副委員長

半日ではとても議論が尽きず、私自身、頭もフル回転で疲れましたが、「地方活性化と5G」に対する社会的な課題解決について、本日の「私のアウトカム」をもう一度考えてみたいと思います。

― 以上 ―

修習技術者支援委員会 委員補佐 新海 平