第20回修習技術者発表研究年次大会の開催報告

11月14日(土)WEBによる『第20回 修習技術者発表研究年次大会』を実施しました。今年の発表研究 年次大会は、全国から選抜されました優秀な修習技術者4名が一堂に会した初の全国大会でした。参加者の皆さま、東北本部、茨城県支部の関係者の方々を含め、総勢60名を超える多くの皆さまにご参加いただいたおかげで、成功裡に終えることができました。

大会には、オブザーバとして、発表当時は修習技術者で現在は技術士(機械部門)の高橋慶彦氏をお招きし、貴重なコメントをいただきました。高橋氏は、昨年度の最優秀発表者でもあられます。

以下、感想を交えながら当日のご報告をさせていただきたいと思います。

    司会者より本日のスケジュール説明

(1)阿部委員長より挨拶

発表を前に、「与えられた(発表時間)40分は、皆さんのステージであり、楽しんでください」と、発表者の緊張をほぐされる言葉がありました。また、「今後導入されるであろう技術士更新制度においては、コンピテンシーを持っているかどうかが重要になる」と、お話しされました。コンピテンシーは、今回より発表審査の基準に加えた「技術士に求められる資質能力」のことです。

    委員長より開会挨拶

(2)岡島正和氏(統括本部代表、電気電子)の発表

「我が家の建て替え時の省エネ対策」と題して、岡島氏ならではの視点で「快適な生活と省エネ/CO2削減の両立」に取り組まれた内容を発表いただきました。解決策立案にあたっては、風向や日射量など多面的な調査、評価を経て、自然エネルギーの活用を検討したものの、周囲環境の変化により止む無く断念されたお話しもいただきました。なお、現在は当初の目標であった「快適な生活と省エネ」を実現されているとのことです。家庭での省エネ対策は、私たちの生活に身近にあるテーマで、地球温暖化対策の一助としてとても参考になりました。

    岡島正和 氏の発表

(3)築城英生氏(近畿本部代表、建設)の発表

「建物内部に無柱空間を有する大スパン鉄骨梁の施工」と題して、業務でのご経験を発表いただきました。築城氏は、従来の3倍の柱間隔をもつ鉄骨造において、建物完成前に内部空間を開放させるという、従来工法では困難であった新築工事に取り組まれていました。施工管理にあたっては、現場とのコミュニケーションを大切にされたこと、3Dで作成したアニメーションを用いて視覚的に分かり易い工夫をし、完成に導かれたお話しいただきました。苦労されながらも新たに出た課題に対しては粘り強く、そしてフィードバックを掛けながら対応された熱意を強く感じました。

    築城英生氏の発表

(4)陸浦昂起氏(中部本部代表、建設)の発表

「生物多様性の保全と水循環機能の回復を目的とした自然公園のゾーニング計画策定」と題して、学生時代に取り組まれた研究内容を発表頂いただきました。陸浦氏は、丘陵地帯にある自然公園を対象に現地調査、利用者等へのアンケート調査・ディスカッションを行い、データを収集されています。緑地保全者の意見をしっかりと汲み取れるAHP法(意思決定手法の一つ)を活用して、生物多様性他3つの観点でデータを視覚化するアイデアで管理の方向性を策定、共有できたとお話しされていました。人と密接している自然公園・緑地が、このような管理手法も用いて保たれていることを今回知ることができました。

    陸浦昂起氏の発表

(5)海原一仁氏(中国本部代表、衛生工学)の発表

「汚泥再生資材製造方法の改善」と題して、業務課題に取り組まれた内容を発表いただきました。従来は、資材である低・高含水汚泥他から汚泥再生資材(造粒)を製造する工程において、現場の目視判断で資材の配合調整がされていたそうです。海原氏は、資材の材料と性状に着目、それらを用いて計算式を導くことで、従来の経験則では難しかった配合設計が実現でき、品質確保と廃棄物処理計画の容易化ができたとお話しされていました。コスト低減の効果もあったようです。今後の労働力不足への対応、資源の有効活用の観点から、経験則の数値化は大切であると感じました。

     海原一仁氏の発表

(6)表彰

4名の発表後、年次大会の参加者皆で投票を行いました。投票の結果、優秀賞は統括本部代表の岡島正和氏、中部本部代表の陸浦昂起氏、中国本部代表の海原一仁氏でした。そして、栄えある最優秀賞は、近畿本部代表の築城英生氏でした。

各氏よりコメントを頂いたのち、阿部委員長より発表者へコメントをいただきました。取り組まれた題材は全く異なりますが、技術士を目指されている皆さまの発表は、レベルが高く、素晴らしいと感じました。発表者を含め、ご参加いただいた皆さまは、本大会を通して、新しい学びや気付きを得られたのではないでしょうか。

   表彰と発表者の方のご感想

(7)松下副委員長より講評と挨拶

年次大会へご参加いただいた皆さまへの御礼のあと、今回の目的「修習技術者の皆さまにご活躍の発表の機会を設けること、発表を踏まえて更に高みを目指していただく」の説明がありました。また、本会の前身である「先端複合技術研究会」から現在の「発表研究会」への遍歴のご紹介とともに、発表は「発表の内容」ではなく「発表の仕方」に重きを置いていることを、今回の年次大会を例に説明いただきました。

また「年次大会に出られた方にはとても良いことがある!」と昔から言われているそうで、「実際、目にしている」とお話しがありました。

    副委員長から講評と閉会挨拶

修習技術者支援委員会では月次の発表研究会を再開予定です。百聞は一見にしかず。このブログを読んで頂いた皆さま、年次大会への一歩を踏み出してご自身の目で「とても良いこと」を確認してみましょう!「我こそは!」という発表されたい方、ご一報をお待ちしています!!

修習技術者支援委員会 委員 森本 聡