2023年1月度修習技術者発表研究会 開催報告

2023年1月度修習技術者発表研究会 開催報告

皆様こんにちは。修習技術者支援委員会委員の中村です。

1/14(土)修習技術者研修会終了後に、修習技術者研究会をオンラインで開催しました。今回は機械部門の修習技術者である村山様に発表していただきましたので、その様子をお伝えします。

~司会より進行説明~

まず、司会の森本委員より発表研究会の進め方について説明がありました。発表時間20分、質疑応答20分の計40分で、評価基準は指定時間内に発表が行えているか、発表内容は簡潔明瞭か、声量は適切か、パワ-ポイントの見やすさ、聞き手に対する判りやすさ、質問への対応は的確か、技術士に求められる資質能力が含まれているかです。また、発表研究会の意義は「技術士としての資質能力の習得を目的として、プレゼン練習の機会を提供し、業務の棚卸に活用願いたい。また、技術士からのアドバイスを得られるので出会い、交流の場としても利用願います。」との説明でした。

~村山様の発表内容~

発表のテーマは空気ばねと電磁石を用いたアクティブ除振台の開発で、2021年12月に発表

した卓上型に続き、デスク型開発の発表でした。

1.除振台について(はじまり、主な用途)

床の微振動を受けて硬度計の測定精度が悪化することを避けるために、コイルバネで支える

台を作ったことが除振台のはじまりで、主な用途は、三次元測定機や光学顕微鏡、露光装置、光学実験の台として使用。床の振動よりもテーブル上の振動を小さくすることができるが、

その除振性能としては、1Hz程度より低い振動に対しては、テーブル上と床はほぼ同じであり、テーブルの固有振動数と一致する振動数では1より大きい振動伝達率となる。この周波

数を超えると除振領域となり、例えば10Hzの振動に対しては10分の1に、100Hzでは100分

の1の振動伝達率となる。

振動センサーや振動制御のためのアクチュエータを用いることで、1Hzから10Hzの除振性

能を改善する「アクティブ除振台」が考案されている。共振での増幅がなくなり、1Hzから10Hzでの除振性能が改善される。(下記写真)

2.搭載可能質量200kg~400kgのアクティブ除振台の開発(近年のニーズと開発着手について)

近年、半導体の高性能化に伴い、レーザー顕微鏡や非接触高さ測定器が多く使われるように

なってきている。これらの測定器は200kg~400kg程度であり、1-10Hzの振動に影響を受けやすい。

このため、1Hzから10Hzでの除振性能が発揮される除振台のニーズが高まり、開発に着手。

3.方式の検討:アクチュエータの選択について

アクティブ除振台を実現するアクチュエータの選択について、使い勝手、コストを考慮し、検討し、設計・評価を行った。アクチュエータとしては「ボイスコイルモータ」、「電磁石」を使う方式があるが、今回は、パワーとコストから、電磁石を採用した。開発目標としては、振動伝達率を10Hzで0.03倍とした。搭載可能質量は400kgを目標。

4.電磁石によるアクティブ除振台作製の技術的課題(電磁石の非線形性の克服方法の考案)

電磁石は、電流に対する発生力が非線形(電流の2乗の力を発生)であること、および、吸引力のみであること。振動の制御には、押す力と引く力の両方が必要でありかつ線形特性が望ましい。

解決策として、電磁石を2個対向して組み合わせ、両者に流す電流を制御することで押す力と

引く力の両方を引き出し、線形特性をとることができるという知見など、複数の解決策を考案し、検討・比較した。

5.除振性能の評価とまとめ、新たな課題

試作を行い、性能を評価した結果、200kg~400kgの搭載が可能であり、目標性能「振動伝達率」を10Hzで0.03倍が達成された。しかしながら実質的な可動範囲は±0.5mmであり、通常求められる可動範囲±5mmを満たすことができないことを把握。

6.成果と今後の取組み

製品化には可動範囲が狭いことがわかったが、波及的効果としては、本試作によって電磁石を用いたアクチュエータの性能限界が明確になった。

今後は、可動範囲±5mmを満たす電磁アクチュエータを開発する。

~阿部委員長講評~

発表お疲れ様でした。発表がとてもよかったことに加え、質疑応答が素晴らしかったです。

事前に質問を想定し、十分な準備がなされていましたし、また、想定以外の質問についてもきちんと回答しており、振動について熟知しているとの印象がありました。

~最後に~

以上、2月度の修習技術者研究発表会の様子をお伝えしました。本日の発表、質疑応答「、講評を聞いて、ほんの少しでも発表してみようかなぁ~、、、と迷っている方は是非、一歩踏み出して、チャレンジしてみませんか!なお、修習技術者の方につきましては技術士による発表資料の事前サポート及び事後のフォローアップを受けることができます。修習技術者発表研修会をプレゼンテーションの場として積極的に利用して頂ければと思います。

日本技術士会 修習技術者支援委員会のホームページに掲載されていますので、アクセスしてみていただければと思います。

https://www.engineer.or.jp/c_cmt/syuusyuu/topics/003/003404.html

修習技術者支援委員会 委員 中村毅寿