さて今年は会場及びWebにて関係者を含め39名の技術士会会員・準会員の参加を得て、開催いたしました。(今回は会員・準会員のみの参加に限定しております。)
1司会・本日のスケジュール・開会のあいさつ
司会進行は、辻委員(森林部門)です。本日は4名のご発表と2つの講演を行います。
発表後にWeb(オンライン)での交流会と会場(現地)での交流会をそれぞれ行います。
2 開会あいさつ(統括本部修習技術者支援委員会 片岡委員長(電気電子))
本日の研修会の開会目的と目標とする成果についての説明の後、「本日聴講されている修習技術者の方は、来年は自分が発表するつもりで準備してください」と挨拶がなされました。
3 発表のルーブリック評価
発表に先立ち、評価方法、評価基準などが説明されました。
3-1 評価方法
発表評価は、発表時間、発表の構成と時間配分、口頭での説明、発表資料のデザイン、質疑応答、技術士コンピテンシー発揮などの項目をそれぞれ4段階で評価するルーブリックを用いています。下表に評価のポイントを示します。
各評価項目を5~2点で採点し、合計点を算出し、最も点数の高い方を最優秀賞とします。なお評価点数が同点数の場合、最も年齢の若い方を最優秀賞とします。
3-2 ルーブリック評価のポイント
ルーブリック評価方法により、多面的・客観的評価が可能となり、採用しています。
発表時間「20分」を意識し、この時間枠の中で発表の構成を工夫し、メリハリをつけた説明を行うことがポイントの一つです。また、質疑応答もとても重要です。質問した相手の理解レベルや関心に応じた回答・説明を的確に行うことがポイントです。
3-3 評価結果のフィードバック
発表者一人ずつにフィードバックします。当日は時間の制限もあり、口頭にてお一人3分程度のフィードバックをいたします。
また、2~3週間程度を目途に、ルーブリック評価結果(各委員のコメントを集約して記入)をお送りいたします。(コメントを記載した評価委員名は匿名としております。)評価の詳細は、外部に公表されることはありません。
4 発表
(前置きが長くなりました、いよいよ発表です)
4-1 発表者(1人目 田畑 望実 氏 建設部門)
発表テーマ:「キツツキ類の採餌木と営巣木の特徴を探る− 枯死木を保残する森林管理指針の検討− 」
13:15~13:35 発表 13:35~13:50 Q&A
一人目は、中部本部代表の田畑さんです。本日は会場(機械振興会館)にご来場されました。生物多様性に配慮した森林管理を行う上で、キツツキ類が利用する枯死木の保残についての発表です。
発表の構成は、上記スライドの通りです。
冒頭で「森林内に枯れ木は必要?」との問いかけを行うことで、聴衆者にしっかりと問題意識を示しています。とてもいいスタートだと思いました。
調査方法や分析方法については、スライドを使い丁寧に解説されています。特に調査分析方法には統計解析の手法を取り入れており、技術士コンピテンシーの「問題解析(R5年1月改定)」にもあるように、データ・情報技術を活用して、問題を定義していました。この問題の定義・分析とその手法は正統な技術士の問題解決コンピテンシーそのものです。
発表を聞いて、私は問題解決とそのアプローチがとても明快だと感じました。まずどんな問題を取り上げるのか、その背景に潜在する問題発生に至る要因が専門外の視聴者にもわかりやすくスライドを使って説明されました。
問題解決とそのアプローチは、技術士の最も重要なコンピテンシーの一つです。会社での業務においてもしっかりとした問題解決のアプローチを行いながら経験を積み重ねていると、感じました。
発表の後半では「枯死木保残方法の提案」(上図)が行われておりテーマとしてしっかりと完結しています。すぐに次のアクションに移ることができる明快な提案だと感じました。
ご発表のまとめとして、本研究を通して培われた「技術士に求められる資質能力」が説明されました。(下図)
発表後、6人の技術士より質問がなされました。専門外(機械、電気電子、上下水、情報工学、機械、応用理学)からの質問ですが、相手に応じてきちんと回答されていました。
「キツツキ類は“おりこうさん”なんですか?」という質問にもご質問の趣旨をくみ取り適切にご回答されていました。
ご発表ありがとうございました。今後の活躍を応援しています。
4-2 発表者(2人目 児﨑 章憲 氏 農業部門)
発表テーマ:「技術的アプローチによる肥料の海外展開への取り組み」
13:50~14:10 発表 14:10~14:25 Q&A
二人目は、近畿本部代表でサテライト会場からWebでのご参加です。マンガンなどの微量要素を含む肥料製品の海外への販売に伴い行った技術的なアプローチに関するご発表です。
発表の構成は上記スライドの通りです。
まず作物の成長に必要な微量要素の説明がなされました。一般な肥料は水溶性であり水に溶け流れてしまいますので、年に数回に分けて肥料を与える必要がありますが、このF・T・E肥料は水に溶けないガラス質でできているため雨などに流されることなく土中に留まるので、年に1回程度肥料を与えればよいという特徴があります。
この微量要素が不足すると、食物の成長にどのように影響するのか、上記のスライドで説明されました。一目で影響のわかるインパクトのある説明だと感じました。
海外への販売にあたって、対象となる国で「肥料製品がどのような効果を上げることができるのか」を明らかにすることが必要でした。そのため、土壌の状態、現地の天候、現地農家の経営方針などを多面的・網羅的に把握したうえで栽培試験を行いました。試験を実際に進めていく中で、予想外の問題が発生し、その問題解決について発表がなされました。
栽培試験は、肥料の効果による収量の増加と品質の増加を実際の栽培により確かめることが目的でしたが、現地の農家が均一に種をまかなかったために、収量に関する評価ができず、品質向上に関する評価のみとなりました。
そこで、2回目はこの点の改善が必要と考え、農家としっかり栽培条件をあわせるなどコミュニケーションをとり収量に関する試験を検討しました。一方、農家側からは別の作物の品質改善効果の検証も求められ、分析をしたところ微量要素の“ホウ素”不足が考えられ、この解決も含め栽培試験を行いました。
コンピテンシーとして、「リーダシップ」「マネジメント」「評価」「コミュニケーション」の向上につながったことがよく伝わる発表内容でした。
問題解決とそのアプローチは、技術士の最も重要なコンピテンシーの一つです。この件では、1回目の栽培試験での反省を受け、「収量の評価」の課題を設定し、その対策のためにしっかりとコミュニケーションを取りながら収穫試験を設計したことが説明され、とても印象深く感じました。
ご発表のまとめとして、本業務を通して発揮されたコンピテンシーと「改善点」が説明されました。
現地農家との多様化価値観を理解し、技術者倫理も考慮された優れた発表と感じました。
発表後、4人の技術士/修習技術者より質問がなされました。専門外(機械、衛生工学、電気電子、電気電子)からの質問です。特に、1回目の栽培試験では、①現地農家との「コミュニケーション不足」と②「栽培試験なので、相手の農家はわかってくれているだろうとの思い込み」があり不十分な結果となりましたが、その再発防止を考えたうえで2回目の栽培試験を設計した点が印象的でした。
また、食糧不足や食品廃棄の問題への見識など、技術士に必要な広い視野を持って業務を進めていることがわかり、応援したいと感じました。
ご発表ありがとうございました。今後の活躍を応援しております。
4-3 発表者(3人目 渡部 乃愛 氏)
発表テーマ:「チタンの新製錬プロセスの検討(専門分野:材料工学)」
14:25~14:45 発表 14:45~15:00 Q&A
三人目は中国本部代表でWebからのご発表です。(ブログ掲載はありません。)
4名のご発表者のうち、お一人だけ高専の学生ですが、他3名の社会人の発表に匹敵する素晴らしいご発表でした。今後のご活躍を応援しております。
4-4 (4人目 芝 泰雅 氏 建設部門)
発表テーマ:「砂防設計業務や日々の取り組みを通じた修習事例」
15:10~15:30 発表 15:30~15:45 Q&A
四人目は、四国本部代表でWebでのご参加です。業務で取り組まれた砂防設計について、及び、小中学生や地域の人々への防災教育の取り組みなどについての発表です。
発表の構成は上記スライドの通りです。(ご本人の映像(黄色枠)が小さくすいません)
主な業務内容は、砂防堰堤の設計や橋梁点検などです。発表は砂防堰堤についてです。
四国南西部の高串にて、砂防堰堤、前庭保護工、管理用道路などを設定し、加えて、付替え道路の計画や地元説明会を実施しています。この渓流では、土石流が発生する危険があり、地元の要望を受け砂防施設の詳細設計をおこなっています。
課題が2つあり、(1)土石流の流向を是正すること、及び(2)生活用道路(里道)の早期交通開放です。これらの課題を踏まえて業務を実施しました。
さて、業務の詳細に入ります。1つ目の土石流の流向を是正についてです。
基本的に水通しの位置は現況河床付近とするのですが、現状の河床の延長線上に民家があることから、土石流の直進性を考慮し、流向是正が必要と考えました。このため、水通りの位置を左岸側へシフトします。しかしこのままではスリット(水が流れる部分)が土石流で閉鎖されなくなる可能性があるため(スリットは平時には水を透過させますが、土石流が起きた時には大きな石を受け止めることで流れを防いでいます)、その解決策として「部分透過型堰堤」を採用することとしました。部分透過型堰堤では、「透過しない部分」に上流からの土砂が少しずつ溜まっていきます。これにより将来的には土石流が発生したときに「透過部分」に土石流がぶつかり、これを止める効果が期待できます。
この部分の説明は、スライドのアニメーションにより説明されていました。
2つ目の里道の早期交通開放です。堰堤の天端より外側(左岸側)に里道を復旧することで、堰堤の施工の影響を受けない計画(堰堤部分を迂回する)を立てました。しかし、左岸側は急こう配であり、法枠工により斜面の掘削を押さえつつ安全性を満たすように工夫しています。
業務を通じ、上のスライドのように、問題解決、専門的学識、評価などの点を含め、資質能力向上につながった、との振り返りでした。また、反省・改善としては、平面図面だけでは地元説明会で伝わりにくかったことがあります。
今後の展開としては、3Dモデルでの説明を取り入れるなど、わかりやすく伝えることを工夫していきます。そのため自分でドローンなどを飛ばし、詳細な地形データをもとに3Dモデルを作成して説明等に用いることができるように進めています。との発表で、地域住民の生活や希望を真摯に取り入れようとしている姿勢を感じました。
次に砂防業務以外の日々の取り組みについて説明します。
問題解決やコミュニケーションの能力を高めるために、社外の人と関わる機会を増やし、いろいろな人から意見を伺うようにしています。
一例ですが、官・民・学が連携した小中学生向けの「事前復興プロジェクト」に参画しています。(下図)
小中学生への授業を担当しています。それぞれの地域にあった教材資料をつくり、まちの成り立ちの紹介をしたり、Google Earthを使って街歩きをしたり、小中学生の反応をみながら授業やグループワークを進めています。
グループワークでは、自分の家など大切な位置にマーキングさせ、その上に災害のハザードマップを印刷した透明なシートを重ね、「自宅が被災しているか」などの気づきを得てもらいました。
これらの取り組みは論文にまとめ、愛媛大学の防災系シンポジウムにて発表しています。
さらに、「えひめ建設技術防災連携研究会」にも参加し、広報部会に所属し地域の皆様への情報発信を担っています。このような社外での取り組みを通し、コミュニケーション能力の向上につながっている様子がよくわかります。
最後にまとめとして知識の蓄積や能力向上、見識を広める活動が重要と認識していますし、また今後の主流となるBIM/CIMなど新しいことにも取り組んでいきます。
以上ご発表でした。
発表後、 4人の技術士/修習技術者より質問がなされました。専門の技術者や専門外技術者(機械、情報工学、電気電気、上下水道)からの質問ですが、質問の意図をきちんと確認し、相手に応じてわかりやすく回答されていました。
3Dモデルを用いることに関するご質問に関しては、地元住民への説明にあたり3Dモデルでの視覚的な理解に加え、専門用語をわかりやすく説明する必要があること、また将来的にはICT施工に使えるように考えていきます。とのご回答でした。
事前防災に関するご質問いについては、住民を動かすような実験的な取り組みとしては「マイタイムライン」の作成などを紹介されました。また今後の課題としては地域住民と一緒に街を歩き、危険な場所を避けるなど、取り組みが必要だと思います。とのご回答でした。地域と密接にかかわりながらご成長されている様子がよくわかりました。
ご発表ありがとうございました。地域向けの事前防災の取り組みを含め、積極的に活躍されることを応援しております。
5 ご講演
5-1 講演(1) 「人工知能の倫理とガバナンス」
公正研究推進協会 理事 池田 紀子氏(技術士 応用理学 総監)
15:45~16:45 ご講演・Q&A:60分
自己紹介と活動
私(池田先生)は自身の活動の目標として「謙虚さと創造力を持て“しなやかに生きる”」を掲げています。ここ10年ほど取り組んでいますが、非常に難しいと感じています。
ライフワークと考える専門は分子構造です。AIに関しては人工知能研究所の自然言語処理グループで化学特許分析と高分子オントロジーのテーマで知識構造化に取り組みました。私はAIエンジンを開発する立場ではなく使いこなす立場です。AIエンジンを開発する立場の人は、AI以外の専門知識がないので、正解にたどり着けない弱点があります。
キャリアは、自律的に目標設定と評価をすることが重要です。キャリアは直線的に伸びるわけではなく、“断絶”と思えるところがチャンスです。
5年前作成した私の技術士としての中長期目標のパーパスは「元気な日本を作る技術者育成作成のため、日本の技術者の国際的通用性を担保する」としました。私が大切にするものは「創造性」「公正」「やさしさ」です。パーパスにまつわるエピソードとしては、2025年のAPEC資格制度の相互レビューで日本の技術士が承認されるようにIPDの具体化を進めることです。文部科学省の技術士分科会やIPD懇談会で検討しています。
私は現在17の委員会にて活動しています(下図MAP)
緑は技術士会内、水色が技術士会外の活動です。すべて技術士会の人脈から始まっています。またパーパスと活動は連動しています。
技術者の役割と能力
IDM世界競争力ランキングでは、日本は35位と低迷しています。日本も頑張っているが、他国はもっと頑張っています。また、2023年の日本のジェンダーギャップ指数は1225位で過去最低でした。
デジタル化推進やカーボンニュートラルの実現に向けて国際社会が大きく変化する背景の中で、技術者に期待される役割が変化しています。すなわち従来のモノづくりへの貢献に留まらない、「未知を求めて新しい時代を切り拓く」、「グローバルな社会課題に果敢に挑戦する」が挙げられています。これはIEAでも同様で技術士に求められる資質・能力につながっています。(下図:求められる能力需要の変化)
現在は「注意深さ・ミスがないこと」などの“態度”が求められていますが、将来は「問題発見力」「的確な予測」「革新性」などの“スキル”が求められ、技術者がより一層活躍するとしています。
IEA GA&PC第4版の倫理
2021年9月に改定されたIEA GA&PCから、倫理に関する部分を見ると、SDGsに向けて、多様性、包摂性や倫理などの価値観がエンジニアリングにとって大切であることが強調されています。原文と和訳を示します。(下図①②)
APRIN(エープリン)のご紹介
「STAP細胞研究不正問題」を受け設立された文部科学省プロジェクトの後継として、研究倫理関連教材や勉強会の提供のため、2016年に設立されました。研究倫理だけではなく、近年技術倫理に拡張し、技術士も参加しています。APRIN教材(eラーニング)も公開し、日本の約7割の大学で採用されています。無料教材として日本学術振興会のeL CoREや科学技術振興機構(JST)の「倫理の空白」などもありますので、ご活用ください。
AIを取り巻く状況
最近の調査では約7割の人がAIの活用に関心があるとしていますが、信頼性に問題があり、活用していないとする人が5割ほどいます。そこで、信頼性に考慮しながらAIを取り巻く状況をお話しします。
総務省・経済産業省の「AI事業者ガイドライン(2024年4月19日)」から抜粋すると、AIとは人間の知的活動(認識、判断、計画、学習など)をコンピュータで実現するための技術群と定義することができ、生成AIとは大量・多様なデータを学習し、入力された自然言語に対して応答するAIであり対話型生成AIといえます。現在のAIは生産性向上の手段、つまりツールですが、ゴールではありません。すなわち、知恵を引き出すなど付加価値化できるパートナーには未到達で、この付加価値化できるための研究が加速しています。
AI技術の特徴と倫理・ガバナンス
AIに関わる研究者・技術者は、AIの特質を十分に理解したうえで取り組まなければなりません。すなわち、AIが社会システムの一部として提供される際には、想定していない場面で問題が発生することや、組織の信頼を損なうことにつながるリスクを含んでいます。
AIについて様々な課題が認識されるようになりました。AIを応用したサービスが不適切な課題を出す例もあり、AIを活用するにあたっての倫理原則やガイドラインが提供されています。
AIガバナンスの構造
APRINのeラーニングで公開しているAIガバナンスの構造です。Whatの枠は、技術士の倫理綱領を含む倫理原則です。Howの枠は、規則、ガイドライン、国際標準、ルールおよび問題が起きた場合の強制力を持つ措置であるエンフォースメントで構成されます。文化・歴史の違いから国や地域によって違いがありますが、コンセンサスが得られつつあります。AIは国境を越えて使われることが多いので、AIの運用を行う際、人・社会・組織を考慮し、コンテキストに応じた方法で解釈を適用する必要があります。ここでも、技術士のコンピテンシーが重要です。
AIのガイドラインのコンセンサスに関して、ハーバード大学のJessica Fjeld 氏らによる研究があります。世界各国の様々な組織から公表された36のAIガイドラインを分析し、8つの共通テーマが求められていることを明らかにしています。「プライバシー」「アカウンタビリティ」「安全性とセキュリティ」「透明性と説明可能性」「公平性と無差別性」及び「人間による技術制御」「専門家の責任」「人間の価値観の促進」です。最初の5つはAIシステムを次の3つは人を扱っています。
ここでは、重要な2つのトピックスについてお話しします。
まずAI技術におけるELSI(Ethical, Legal and Social Issues)の必要性です。本質的に新しい技術が現れた時には、それに対応する倫理規範やガイドライン、法制度が必要になります。さらに、新技術の社会的受容度の見極めやコンセンサスの形成が必要です。1990年に発足した米国でのゲノム解析プロジェクトの中のELSI研究プログラムにおいて本格的な議論が行われ、日本も追従しています。
2つ目はEU AI 法(2024年5月成立)です。AIの研究・開発に際して、基本的人権及びEUの価値観の尊重を確保したうえでAIへの投資とイノベーションを促進することを目的とする法律です。着目点はリスクレベルを4つに分類した、リスクベースアプローチです。日本と違い、EUが多民族であり、ハードローと呼ばれるルールを最初に定めておかないと共通認識が得られないという地域性があります。
-
生成AI
生成AIの使い方として、ヒントや気づきにつながるということがあります。たとえばメール分類や返信文案作成の生成AIツールが有効そうです。生成AIではテキストや画像、動画などが生成できます。業務改善で活用する際には、計算機で処理できるようにデータを加工することが鍵となります。
生成AIは信頼できるかをまとめてみました。
AIの回答は変化しており、AIモデルは良くも悪くも更新されています。生成AIの実態は不十分な知識であり、意思決定支援につながるかどうかは各自が責任をもって判断することとなり、倫理とガバナンスがよりどころとなります。倫理とガバナンスはブレーキではなくガードレールです。
AIの問題とセキュリティ
安全なAIにむけた重要課題はセキュリティです。AI技術が適用されているなかで、様々な問題がすでに発生しています。現在のAI技術の課題に根ざす問題や社会に内在する課題がAI技術により再生産・増幅される問題、ユーザ側の利用の仕方に起因する問題があります。倫理原則などから明白に違反と考えられるものは対処可能ですが、グレーゾーンにあり判断に悩むケースもあります。例えば日本の不動産業者が活用していたAIでは、入居可否の判断にあたり、女性が低く評価されてしまう事例があります。男性のデータが多く女性のデータが少ないため男性中心の評価がなされてしまうためであり、このAIツールは後日却下となりました。
AIとセキュリティで気を付けることは、学習させない〔むやみにデータを公開しない〕、禁止ワード〔特定可能なワードを使わない〕、個人情報〔非公開が原則〕、少しでも違和感を覚えたら、ブロックやログチェックです。
おわりに
生成AIのような新技術の登場で世の中の動きが変化している中では、仕事のやり方を見直し、新しい使い方でサービスを活用していく姿勢が求められています。ブレイクスルー技術を積極的に活用することが技術士の要件であると、IEAでも述べています。
そこで、間に合わない法規制を待たずに行動し、社会的受容性を高めることは、われわれ技術士にとって重要なマインドです。生成AIを活用しWell-Beingを得られれば大きな活力となりそうです。
本件に関しましては、月間PE(9月号)に掲載しています。
さて、おまけですが、技術士の活動である「ボランティア活動」への思いを述べます。私は、次の3つを信条とし活動をしております。
皆様と楽しく活動しながら、技術士会を活性化できたらと思います。
次にIPD研究会をご紹介します。修習技術者を含む技術者の育成に取り組んでいます。技術士会の活性化につながるこの会にご入会いただけたらと思います。
最後にAPRINからご案内を二つします。
(1)2024年度全国公正研究推進会議
2025年2月12日水曜日、東京大学安田講堂他、参加費無料です。
リアル参加となりますが、後日(3月末まで)オンデマンドでも公開予定です。
https://www.aprin.or.jp/seminar/seminar_detail/aprinkaigi2024
(2)製造業のデータ不正続出に思うこと(専務理事 池田俊介先生)
記事をぜひご一読ください。
https://www.aprin.or.jp/essay/8236.html
5-2 講演(2)「修習ガイドブックと継続研さんについて」
研修委員会 幹事 阿部 修一氏(技術士 電気電子部門)
16:45~17:05 ご講演・Q&A:20分
-
修習ガイドブックについて
修習技術者が初期専門能力開発(IPD)を通して身につけるべき基本的な内容と、修習への取り組み方をまとめている。
修習技術者のためのガイドブックは、2002年(平成14年)に第1版は、技術士制度の変更に伴って発行されており、「優れた指導者」の下での4年間の修習カリキュラムを示すことが目的であった。
ガイドブック第2版は、外部有識者を含めた委員会を設置し、第1版には含まれなかった個別の能力要件の検討を行い、今日につながる3つの基本修習課題を整理して加えて2004年に発行された。すなわち「専門技術能力」「業務遂行能力」「行動原則」である。
ガイドブック第3版は、第1版2版を経て、修習技術者がIPDを通して身につけるべき基本的な内容と修習への取り組み方を簡潔にまとめ、かつ、IEAのGA&PS第2版(2009年)のPCも参考に、当時の動向を踏まえ2015年に発行された。
つまりガイドブックは、2015年までの技術士会としての知恵の結集であるといえる。
-
修習ガイドブックの第1版への改版作業
現在改定作業を進めている。改定の目的は、一つは「PCとは何かを明確にすること」であり、IEA GA&PC第4版で提唱する「現在の世界が志向する社会を実現するプロフェッショナルエンジニアの姿を明確にすること」を参考にしている。二つ目は、「個人と社会のWell-Beingを実現できる技術士」になるためのマニュアルへのバージョンアップをめざすことである。
改定のポイントは、次に掲げる通りである。
- GA強化とPC獲得
- PCの明確化
- 技術者の成長過程と目的と目標
- 技術者の自律(自立)
- コンピテンシーの属性ごとの達成基準と詳細説明
- IPDサイクルの修正
-
継続研さんについて
私(阿部講師)の経験に基づく考えを交え、研さんの考え方を説明します。
次の3つを自己ルールとしている。
-
継続研さんとは業務である
業務の一つとは考えないで、生きるために必要な研さんすべてを業務と考えることで、日常生活からも多くの気づきを得ることができる。趣味から研さんにつながることもある。研さんのための研さんではなく、目標をたて自己評価することが大切。
-
継続研さんは自律である
自己評価できることは自律であり、評価がなければ研さんだけで終わってしまい、自分の成長を確認できない。業務について内容・手段・成果を簡単な表現でもよいのでまとめ、期待したようにできなければ、反省し改善を重ねていく。
-
継続研さんは身銭(お金、時間、機会)を切るものである。
20代に身銭を切って取得した資格(非破壊検査、溶接管理技術者)、および4年前のお母さまの引っ越しについてお話しされました。とてもプライベートなお話なので、掲載しませんが、講演を聞かれた方にとっては印象的だったと思います。(ブログ作成者注)
最優秀賞発表
中部本部、近畿本部、中国本部、四国本部、および統括本部を代表する5人の技術士によるルーブリック評価にて、最高点を獲得した発表者は、「中部本部代表 田畑望実さん」でした。
田畑さんには、最優秀賞の賞状と記念のトロフィーが送られました。
最後に
最後までお読みいただき、ありがとうございました。かなり内容を絞りましたが、長文となってしまいました。
さて技術士会では、毎月、発表の場を用意しております。発表20分、質疑応答20分です。発表を通して自己のコンピテンシーについて振り返ることができることに加え、技術士より多面的なフィードバックを得ることができます。
そして、各本部の優秀者は全国大会に出場できます。発表要項は
https://www.engineer.or.jp/c_cmt/syuusyuu/topics/003/003404.html
にあります。
修習技術者の応募をお待ちしています。
以上