2025年2月 修習技術者発表研究会 開催報告

2025年2月8日(土)、研修会に続き発表研究会を開催いたしました。発表者は、修習技術者の澤野 貴昭様(機械部門)です。

このブログでは、発表の様子をお伝えします。

1 司会進行

司会は、小塚委員(金属部門)です。発表研究会のお願い事項の説明と、進め方のプログラム説明がありました。評価基準はルーブリック評価基準を採用して基準の明確化を図っております。

評価方法は 次の通りです。

・発表時間20分、質疑応答20分の計40分。

・3分前、1分前、終了時にチャットでお知らせする。

・指定時間内に発表が行えているか

・聞きやすさ(発表内容は簡潔明瞭か、声量は適切か)

・パワーポイントの見やすさ(文字・図表・色使い等)

・聞き手に対する判りやすさ(発表構成、時間配分等)

・質問への対応(質問への対応は的確か)

・技術士に求められる資質能力(8つのコンピテンシー)が含まれているか

発表研究会では、質問・コメントを積極的に行うように要請がありました。コンピテンシーの向上において、発表価値を高めるためにも皆様のひとことが重要です、とのご説明でした。

2 発表

2-1 はじめに(発表の要約)

発表20分の冒頭に何から話し始めるか、とても重要です。澤野さんは「発表の要約」からスタートし、業務の全体像と自分の業務での位置づけ、課題と解決策を要約説明しています。とてもいい出だしです。

澤野さんのご担当は製品の受入検査であり、ご発表の要旨は、検査方法の改善により、検査に要する時間を8時間から3時間に短縮し、かつ工程に習熟することで工程を短縮できたことです。

2-2 発表内容

2-2-1 澤野さんご所属グループのメンバー構成

課長、澤野さん、主任、中堅担当者、本年度入社者など8名でグループ構成です。澤野さんは主に入荷時受入検査を担当し、そのスキルは中堅や新人の担当者との共有を進めているそうです。

2-2-2 入荷時受入検査の項目

受入検査では、レーザの出力値、スペクトル測定などを行います。スペクトル測定を実施するには、レーザ光を測定器(図下の右側)に入れる(入射する)ために、直径10μm(マイクロ)のコアを持つファイバのコアにうまくレーザを入射する必要があり、この調整がとても難しく時間がかかるとのことです。扱うファイバアンプは、YDFAとEDFAの2種類で、それぞれ波長が1.064㎛、1.56㎛です。

スペクトル測定は、測定器(スペクトルアナライザ)への入力がファイバ接続になるので、検査対象の装置から出力されるレーザ光を反射ミラーで反射させレーザパワーを小さくしファイバ入射レンズに入れます。最終的にスペクトルアナライザに導きます。

2-2-3 問題の分析、課題の設定

ここで、問題の分析、課題の設定、評価基準を次の図ように設定されています。

受入検査ではYDFA(波長1.064㎛)とEDFA(波長1.56㎛)の2種類のファイバアンプについてスペクトル測定を行いますが、この時、YDFAの測定系の構成は3時間で完了できるのですが、EDFAの測定系はスキルがないと8時間近くを要します。この違いを分析することで問題点を図のように整理しています。

次に課題の設定を行っています。課題は上図に示すように2つあり、①YDFAとEDFAのレーザ出口でのビーム径の差異を把握すること。及び、②ファイバ入射レンズに入射するときのビーム径が同一であるとして、焦点位置でのビーム径の検討を行い、差異を確認すること、です。

また、対策立案にあたっての制約条件が3点あり、入射ビームのスポット径がファイバのコアより小さく、かつファイバコアからはみ出さないこと、パワー(ファイバをこわさない)、レーザ入射角度の3点を下図のように満たす必要があります。

2-2-4 解決策の提案(実際の配置)

EDFAとYDFA2種類のレーザ光の波長とビーム径に応じて、レーザ出口からの距離を理論式に応じて調整することでファイバ入射レンズを配置することとし、下図のように提案しています。

2-2-5 評価・結果のまとめ

ファイバ入射光学系のレイアウトを見直すことで、調整時間を3時間以内とすることができました。今後は、調整手順を文書化し、若手への展開を図ります。

3 質疑応答

Q1 個人のスキルに依存するということですが、スキルのある人はどれぐらいの期間をかけてスキルを得たのですか?

⇒スキルの習得には数か月かかると思います。公式化しなるべく早く若手がスキルを習得するようにしたいと考えています。

Q2 レーザのビーム径が広がる理由はなんでしょうか?

⇒固体レーザと違い、ファイバアンプによるレーザの特性であり、よくわかっていません。

Q3 他にも俗人化しているスキルがあるのか?標準化する方向感なのか?

⇒会社のノウハウとして俗人化で社内に残す技術もある。標準化し外部に出せる技術もあり、社内で整理する予定です。

4 澤野様のより発表後の感想が届きました。(一部抜粋)

私の発表を概ね好意的に受け入れていただいたことにほっとしています。

事前の想定は1枚1分のペースで、19分台の前半での発表でしたので、自分的には時間通りでした。発表で心がけたこととして、大学生・院生のときの当時の研究主任が言っていた、発表は最初の1,2分が勝負でその間に聞き手は自分にとって価値のある発表かどうかを判断し、自分にとって価値が無いとなれば聞かくなってしまう、ということを意識しました。

プレゼンは1枚1テーマになるように努力しました。プレゼンの並びについては、「修習技術者ガイドブック」のコンピテンシーに基づいて、課題解決型になるようにしました。表現については、事前の支援員会の皆様のコメントに基づいて修正を繰り返すことになりましたが、人によって表現の受け止め方が違う、ということには注意しました

ところで、(実は)発表の中では、質問しやすいように?意図的に発表本編での説明を省略したり(例えば「ウォーキング」など)、説明を中途半端にしたところ(自己紹介中の趣味とか)がありました。これらは、当初発表本編で話すつもりでしたが、編集するうち20分の間に説明するには時間が足りないことが分かったので、資料編に入れて、質問に備えることにしました。ただ、資料編はかなり突っ込んだ専門的な質問に対する資料であったので、ほとんど活躍しませんでしたが。それでも資料をまとめるうちに、自分でも気が付いていなかったことがいくつか出てきて、いい勉強になりました。

とりとめのない感想になってしまいましたが、最後に、当日、私の拙い発表を聞いていただいた皆様、修習支援委員の皆様に感謝申し上げます。

以上