2025年3月度修習技術者研修会開催報告

こんにちは、修習委員の名平です。

3月15日に行われた高専生インフラテクコン技術士会賞受賞チームによるプレゼンテーション研修会の様子をお伝えします。

インフラマネジメントテクノロジーコンテスト(インフラテクコン)では、高専生が公共インフラに関するアイデアを提案します。2024年には全国の39チームが参加しました。日本技術士会は、優れたチームに日本技術士会賞を授与しており、2024年度は以下の3チームが受賞しました。

  • まこLab(石川高専)
  • 暗渠の安全守り隊(津山高専)
  • 水道を止めるな!(木更津高専)

卒業シーズンにもかかわらず、石川高専と津山高専のメンバーに参加いただき20分のプレゼンテーションと質疑応答を行いました。

それでは、研修会の模様をご紹介します。本日の司会は野田委員です。

司会進行:野田委員

日本技術士会賞受賞チームによるプレゼンテーション

まこLab(石川高専)

石川県は2024 年1 月1 日に発生した能登半島地震により甚大な被害を受けました。その復旧を妨げていた原因の1つが、橋などの道路インフラの分断です。

橋自体は大きな被害を受けていなくても、地震による地盤沈下によって道路と橋の間に段差が発生し、重機やトラックなどが通行できない状況が発生しました。

土嚢を用いた橋の段差の補修

石川高専のまこLab は、震災直後で資材が不足する状況下でこの段差をどう補修するかに着目しました。実現手法として、竹を編んで土嚢袋を作り、その中に地震によってがれきとなった瓦を砕いて入れることを考案しました。

竹を編んだ土嚢袋

土嚢の強度については、圧縮試験/密度試験/引張試験による評価を行い、土に対して圧縮強度が弱い問題に対しては珪藻土を混ぜることで、強度の問題を解決させました。

竹を編んだ土嚢袋は、あらかじめ編んだ状態で保管しておき、必要な時にすぐに使用できるよう準備しておくことを想定しています。

プレゼン後、技術士会審査メンバーからの質問がありました。道路インフラが分断した状況下で土嚢に必要な量の瓦を入手できるのかといった質問や、竹に着目した理由などについての質問がありました。

暗渠の安全守り隊(津山高専)

津山高専チームの暗渠の安全守り隊は、地下に埋設された水路である暗渠において、平時/緊急時双方に適用可能な検査システムの構築を行いました。

暗渠を斜め方向から単眼カメラで撮影し、その動画をPIV 解析(粒子画像流速解析)することにより、凹凸部の検出ができることを実験で検証しました。この手法は、市販のドライブレコーダーやアクションカメラを用いて安価にシステムを構築することができる点が大きなメリットです。

カメラ画像を用いた暗渠検査システム

また、暗渠を点検するための多脚ロボットの検討も行いました。不整地での走行を想定し、水平運動と回転運動を併せ持った機構を有しています。これにより、暗渠内の段差や泥の中であっても走行可能なシステムとなっています。

不整地走行が可能な検査ロボット

技術士会審査メンバーからは、LiDAR などを用いた他の検査方法と比較した際の優位点や、今後の活動計画についての質問がありました。

今後は、この単眼カメラによる撮影システムをロボットに搭載し、津山市と協力してフィールド実験を行う予定とのことです。

技術士会賞表彰式と講評

2チームのプレゼンテーションが終わった後、日本技術士会研修委員会松山委員長より、表彰状の授与式を行いました。そして、日本技術士会賞 審査ワーキンググループのリーダーである黒澤技術士より、各チームに対する講評を頂きました。

黒澤WG リーダーによる講評

パネルディスカッション

築城委員の進行のもと、高専出身の技術士である、鬼鹿毛委員・佐々木技術士をパネリストに迎え、津山高専メンバーも交えたパネルディスカッションを行いました。

パネルディスカッション担当の築城委員/鬼鹿毛委員/佐々木技術士

パネルディスカッションでは、技術士会の研修会という場でプレゼンを行った感想や、インフラテクコン応募の動機、ここで得た知識や情報、関係者とのつながりなどをどう活かすかなどの点について、話を進めました。

パネルディスカッション後半では、これまでの日本技術士会のインフラテクコンへの関わりを振り返りました。片岡委員長より、技術士会賞の審査基準や技術士会賞の審査プロセスについての解説がありました。

片岡委員長による技術士会賞の解説

技術士会賞の選定において、以下の5 項目が審査基準となっています。

  1.  課題の発見と解決に向けたアプローチ
  2.  協同や協力を意識した活動
  3.  学習を自主的・継続的に行う姿勢
  4.  社会への意識と技術者としての責任・倫理
  5.  理工学基礎知識とツールの修得

これは、IEA(国際エンジニアリング連合)のGA(Graduate Attributes)及び、JABEE の学習・教育到達目標9 項目を基に、定めたものです。

この基準に基づき、各部会および地域本部から選出された技術士18名が厳正な評価を実施しました。国際標準のエンジニアリング能力を有する技術士が、高専生の将来に大きな期待を寄せつつ、コンテスト出場チームを約3ヶ月間にわたり審査しました。

インフラテクコン技術士会賞のねらい

終わりに

私は昨年度まで技術士会賞審査メンバーの立場でした。今年度参加者の一人として、純粋に高専生のプレゼンテーションを楽しむことができました。

閉会挨拶でも述べましたが、各チームの課題抽出や問題解決のプロセス、活動実績をコンパクトにまとめ上げ第三者へ分かりやすく報告するといった点は、技術士を目指す皆さんに非常に参考になると思います。

インフラテクコンのホームページには、技術士会受賞チームだけでなく全出場チームのプレゼン動画が掲載されています。ぜひ視聴してみてください。

最終作品 – インフラマネジメントテクノロジーコンテスト2024

来年度の活動に向けて、高専チームの皆さん、引き続き頑張ってください!
技術士/修習技術者の皆さんも、引き続きインフラテクコンへのご支援よろしくお願いします。

修習技術者支援委員会
名平 光宏