2022年度4月度 修習技術者研修会を終えて

このブログを読んでいただいている皆さまへ

〔序章〕

いつも修習技術者支援委員会を温かく支えてくださりありがとうございます。今回ブログを書いているのは、修習技術者支援委員会 委員の森本 聡です。今回の研修会では、司会として、そして高専を卒業したOBの一人としてワクワクしながら参加させて頂きました。私にとって、研修会の前から関係者と打ち合わせを重ねながら開催に至った思い出深い研修会の一つとなりました。どうぞしばらくの間、お付き合い願います。

司会の森本委員(筆者)

 2022年4月度の研修会は、初夏を感じさせる快晴の土曜日午後にスタートしました。今回の研修会は、専門技術能力「高専生インフラテクコン技術士会賞受賞チームによるプレゼンテーション」、そう 修習技術者研修会史上初!高専生とのコラボ企画。そのため、高専生をはじめ大学生、教職員の皆さまもご参加頂いた120名超の大規模研修会となりました。

昨今、話題になることが多いインフラ問題、この社会的課題に高専生が立ち向かうチャレンジングな企画、インフラテクコン。研修会では、インフラテクコンに参加した中から見事 技術士会賞を受賞した3チームが登壇!!想定を遥かに超える素晴らしいプレゼンテーション、そしてパネルディスカッションを披露して頂きました!

〔本章〕

研修会に先立ち、技術士会代表として河津副会長から挨拶を賜りました。

ご参加頂いた方への感謝の言葉、そしてインフラテクコンと技術士会との関連についての説明がありました。「インフラテクコンが単なるコンテストではなく、仲間と共に考え、まとめ、発表することで、社会に役立つ機会を知るために設置された」ことをご紹介頂きました。また、「このコンテストを通して、学校生活だけでは身につけにくい課題発見力を養い、インフラの大切さやマネジメント、メンテナンスの理解、共同の輪を広げる効果がある」とも。今回の研修会を通して「レベルと知識の高い高専生へプロの技術者のアドバイスで新たな気づきを促し、プレゼン、ディスカッションから最近の学生の意識と能力の高さから、プロの技術者へ新たな気づきを与える」双方向への相乗効果の期待を述べられました。

研修前挨拶をする河津副会長

続いて、当委員会の阿部委員長から開会の挨拶です。研修会開催にあたり、委員長が初めて高専生の発表動画を見たとき「びっくりした」と、そして「私が学生の時は単なるモノづくりとしか見えていなかった。今の高専生は社会的問題まで取り組んでいる。素晴らしい。」と心境を語られました。そして、参加頂いている修習技術者の方へ向けて、「日頃から話をしているコンピテンシー、今日の発表でも散りばめられている。各チーム個性はあるが、共通していること、それは複合的な課題に取り組んでいること。」と気づきを与えるきっかけの言葉を伝えられました。

開会挨拶をする阿部委員長

 そして、いよいよ第一部の開幕です!第一部では、技術士会賞を受賞した3チームが自身の研究成果をいかんなく発揮!20分のプレゼン時間をフルに使い発表を行いました。

スタートをきったのは、関東に吹きつけるからっ風。風の力を自在に操る若きエンジニア “あつまれ!グンマの風/群馬高専”の皆さん!です。

プレゼン#1 群馬高専

 プレゼンテーターは、専攻科1年の方。専攻科1年生中心のチームです。本チームは、SDGsのゴール目標を7、9、13に設定、背景として国の政策目標を踏まえた上、現状の課題を抽出。(我々が取り組んでいる進め方と同じでは!?レベルの高さに、思わず“う~ん”とうなってしまう。)プレゼンは続きます。本チームは、風力発電以外の発電方式との比較、地元の条例の導入から将来も見据えます。群馬に吹き付ける風を最大限に活用するため、従来の弱点を詳しく分析、垂直軸型風車に「風レンズ」を取り付けることで克服、風速は通常の3倍にも増幅!本稿では述べませんが、さらに効果向上の探求は続き、試験、評価も行われていました。

”あつまれ!グンマの風”のプレゼン

 プレゼン後の質疑応答では、プロの技術者、修習技術者、技術士からの鋭い質問にも的確に回答。20分の質疑応答もあっという間に過ぎました。アドバイスや意見交換をしたことはお互いにとって、とても有意義であったのではないでしょうか。質疑応答をした皆さん含め、参加者の皆さんは、孤高に回答をする若きエンジニアに何かを感じたことと思います。

個人的な感想として、課題解決へのプロセス、プレゼン資料の見やすさ、プレゼン力、質疑応答、いずれも高いレベルにあると感じ、身の引き締まる思いがしました。「風レンズを用いた垂直軸型風車による高効率発電」秀逸です。

2チーム目は、2つの力が一つに融合、“カリカリchicken/呉高専・神戸高専”の皆さん!「都市を支える縁の下の力持ち~渋滞×水害なんでもござれ!?~」のプレゼンです。

プレゼン#2 呉高専/神戸高専

 プレゼンテーターは、高専4年の方から順に、メンバー皆さんが二つの高専をWEBでリレーして発表されました。プレゼンは、神戸市の防災授業から神戸高専の強みを活動に活かせると考えたと、背景説明から。本チームは、マレーシアのSMARTトンネルを日本でどのように適用できるかを検討されました。SMARTトンネルは、道路と水道の両方の機能に活用ができるスマートなトンネルです。広島県福山市を対象とし、現状の課題抽出、交通面と防災面から費用便益分析を実施。解決策の実現性評価を説明されます。(こちらのチームもレベルが高い!)また、SMARTトンネルを西日本豪雨災害に適用した場合の軽減額を、雨量や実際の被害から算出、経済性評価されています。(計算が緻密!!すごい!という正直な思いが出ました。)また、途上国への還元・適用については、SDGsのゴール目標1、2、6、8、13を掲げます。将来的には「住民に愛されるインフラを目指す」とSMARTトンネルの実現に向け熱い思いを語りプレゼンは終わりました。

”カリカリchicken”のプレゼン

 質疑応答では、「河川、道路、交通の縦割り状態の管理をどのようにするかまで検討が必要」と専門家からのアドバイスに、真摯に受け止め誠実に回答されていました。また、WEB会場には呉高専出身の技術士もおられ、先輩から辛口のコメントが出る場面も。従来の研修会では見られない先輩、後輩の見えない強い糸を感じられた新鮮な光景でした。

そして、トリを務めるのは、“竹竹取る取る首っタケ破竹戦隊バッサイジャー/徳山高専”の皆さんです!!

あれ?開始直後、トラブルが・・・。よくある、WEBから落ちてしまわれました。あたふたする私。暫く経って我に返り、こんなとき司会がうまく回す!私の目に飛び込んできたのは、片岡副委員長!!え~~い、無茶ぶりしちゃえ!受け取った片岡副委員長は沈着冷静に、前の発表者、呉高専/神戸高専へご質問頂き、なんとか場をつなぎました(見事なチームプレーさすがです!)。

場をつなぐ片岡副委員長(さすが!)

 復帰後、徳山高専のプレゼンです。(ワクワク♪始まりました!)オープニング動画、5人の勇者が竹の化身と未来のインフラをかけ戦います!プレゼンは、オリジナルの5色のコスチュームで登場~~!ゴレンジャー世代の私にはたまりません(笑)。本題に戻しましょう。

プレゼン#3 徳山高専

 プレゼンは、リーダーではないバッサイレッドから順に5人リレー形式で行われ、高専4年、1年生が一丸となった動画満載の内容でした。

全国第3位の竹林面積を誇る山口県、高齢化による放林の活用が課題とのこと。加えて、竹の地下茎による地盤保持力の低下、竹の繁殖力による周囲環境の悪化が問題に。この背景から、「厄介者とされている竹を新たなニーズの救世主にする」こと、そして「竹インフラがある川の風景」を本チームは目指します。竹製の遊具・照明製作といった竹を活用した新しい創造による攻めの竹タリティ、また、護岸・河床の保全の観点から守りの竹タリティ、この両方から複合的課題に果敢に挑戦!地域の特産である竹蛇籠(たけじゃかご)の活用に至ります。その実現のため、地域との連携にも言及。そう、地域参加型の取り組みです(素晴らしい視点です。)。子供さんでも取り組める工作や、竹蛇籠の工業製品化という新しい地域創生も検討。竹製品を有効利用した効果も丁寧に説明され、「竹と人間との共存・共栄」という熱いメッセージを掲げ、プレゼンは終わりました。

”竹竹取る取る首っタケ破竹戦隊バッサイジャー”のプレゼン

 質疑応答では、動画を用いて説明。修習の高橋委員から「面白いアイデア。面白いアイデアを実現させる人は、豊かなアイデアを出すだけではなく、実現させるまでの幾つもの問題を解決する能力も持っている」と力強いアドバイスがありました。

質問・アドバイスをする高橋委員

また、他の参加者からの質問に対しても、出来ているところ、出来ていないところを明確に応えられており、技術者倫理を感じました。岩熊様からは、「高専先生の3年、5年かけて技術者の成長をしていくお考え、エンジニアを育てる高専の仕組み、教育を高く評価している」と講評を頂きました。

(このあと、僭越ながら森本から、賞状と副賞授与を3チームの皆さまに行いました)

賞状授与する司会の森本委員

 休憩後、第二部に突入!インフラテクコン主催者、事務局の田村様からお言葉を頂きました。

発表者へのねぎらいに続き、3回目のインフラテクコン準備が進んでいることのお話がありました。また、「(インフラテクコンは)中学校を出てすぐに技術の道を進んでいる高専生が、課題を見つけるプロセスを大事にしている。技術士には、応援団、メンターとなってアドバイスを頂ける方が出てくれることを願っている。」と期待を込めたコメント、そして、高専チームの発表に至るまでの裏話もチラっと。田村様も高専出身の技術士、温かいコメントが続きました。

インフラテクコン事務局 田村様の挨拶

 続いて、司会のバトンを阿部委員長に!パネルディスカッションの始まりです。どんなやり取りが展開されたのでしょうか?

阿部委員長をファシリテーターに、石黒委員、小田委員もパネリストとして参戦です。

ファシリテーター:阿部委員長

パネリスト:石黒委員

パネリスト:小田委員

「未来の技術者との意見交換」と題して、“普段はどんな学生?”のテーマからスタート。直近に終えた“プレゼンテーションの感想、得たものは?”、“今回取り上げた課題をどのように発見したか、プロセスを教えてください”と、大人でも考え込んでしまうテーマも。阿部委員長からのフリに、高専生のメンバーが応えます。石黒委員、小田委員も笑いを交えながらコメント、和やかな雰囲気でディスカッションは進んでいきます。高専生“異なる学年や専門分野や学校のメンバーとどのように取り組み、工夫・苦労したところは?”、高専生ならではのテーマと感じました。高専は5年制の学校、卒業後、より深く学ぶため併設されている2年制の専攻科に進む学生さんも多いことでしょう。お気づきかと思いますが、年齢差5歳以上のチーム編成もあり得るところが、高専ならでは!ですね。

40分のパネルディスカッションを終え、片岡副委員長から閉会の挨拶を頂きました。

閉会挨拶をする片岡副委員長

あっという間の3時間、熱気冷めやらぬ間に本研修会は幕を閉じました。

(この後、情報交流会は白熱していました^^;)

〔エピローグ〕

今回、改めて振り返ると、間近で参加させて頂き、高専生のレベルが予想以上に高かった!という一言では言い表せないワクワク感と力強さを体感しました。画面越しでもその迫力、プレゼン力の高さもさることながら、テーマに対する熱意、その課題を解決へと導くプロセス、まさに若きエンジニアだなと。一方、パネルディスカッションで垣間見えた本音は、学生さんそのもの。両方の面をもつ素敵な講師の皆さんでした。高専生、修習技術者、技術士、参加された皆さんそれぞれにとって、新たな気づき、学びを得られた研修会であったと感じています。引き続き、研鑽に勤しんでいこうと決意した次第です。

修習技術者支援委員会では、これからもご参加頂くすべての方にとって気づきや学びを感じて頂ける研修会づくりに取り組んでまいります。次回、研修会もお楽しみに!ありがとうございます。

2022年5月吉日

修習技術者支援委員会

委員 森本 聡