みなさん、こんにちは!
修習技術者支援委員会委員の石川です。
2023年5月13日(土)、2023年5月度の修習技術者研修会を開催後、引き続いて発表研究会を開催しました。今回は田中高宏様(修習技術者(機械部門))に発表者として発表いただきましたので、その様子をお伝えします。
まず、司会の築城委員補佐(技術士(建設部門))より発表研究会のお願い事項の説明と、進め方のプログラム説明がありました。評価基準はルーブリック評価基準を採用して基準の明確化を図っております。
写真1 発表研究会の進め方
・発表時間20分、質疑応答20分の計40分。
・3分前、1分前、終了時にチャットでお知らせする。
・指定時間内に発表が行えているか
・聞きやすさ(発表内容は簡潔明瞭か、声量は適切か)
・パワ-ポイントの見やすさ(文字・図表・色使い等)
・聞き手に対する判りやすさ(発表構成、時間配分等)
・質問への対応(質問への対応は的確か)
・技術士に求められる資質能力(8つのコンピテンシー)が含まれているか
について、段階評価を行っています。また、発表研究会では、質問・コメントを積極的に行うように要請がありました。コンピテンシーの向上において、発表価値を高めるためにも皆様のひとことが重要です、とのご説明でした。
続いて田中様から、「プラスチック射出成形金型の基本的な設計」に関する発表がございました。
写真2 射出成型の概要
金型設計チームのプロジェクトマネージャを務める演者からの冒頭説明は、「射出成形工程はたい焼きの調理工程と似ている」でした。ちょっと大胆で簡単すぎる表現にも 思えましたが、難しい専門語句を使わないプレゼン表現は、専門外の方には業務のイメージが掴みやすく、概ね好評だったのではではないかと思われます。溶融した樹脂=溶かした小麦粉、たい焼き型=成形金型といったイメージでしょう。中のあんこや、クリームは何でしょうか?
射出成形時の、成形品特有の問題として、成形不良(バリ、ショートショット、変形)が挙げられ、特に変形が、最も解決が困難とされます。その発生原因は複数あり、その1つが成形品の収縮率で有ること、変形の1つ、反りは樹脂の冷却がしにくい厚いところは冷却不良で、収縮量が大きくなる、との事です。どうも、あんこ・クリームは、その肉厚部分の冷却しづらい溶融樹脂のことのようです。冷却が遅いと、収縮量が大きくなる。それでわかりました。実はけっこう肉厚だったようです。コンパウンド化もノウハウが求められますし、射出成形の条件出しも、写真4の様にチームを作り、時間と手数をかけています。射出成形品1つ取っても、その背後には多くのチーム、人々が携わっているのが良くわかります。
写真3 成形品の変形原因
写真4 立場と役割
さて、解決策は、「CAE流動解析やテスト用簡易金型での成形テストで、実験計画法による検証回数を少なくする工夫をした」とのことです。実際の金型は、実験で傷つけたりして壊すと、費用と労力がかかりますので、それを回避する策であろうと思います。
実型での成形作業が行われ、ファンの翼の変形が製品要求仕様内に収められたようです。寸法の変形量が何mmかはわかりませんが、成果は無事達成とのことです。
写真5 解決策実施による成果(1)
写真6 解決策実施による成果(2)
コンピテンシーの説明では、設計部門と量産部門の意見対立の調整を図る必要があったとの事で、ここでもCAEの結果説明を行い、社内コミュニケーションを図っていたようです。成形作業の現場からは、工法変更についてさまざまに懸念が出るのはもっともな事でしょう。樹脂温度と射出圧力の制御で、サイクルタイムを伸ばす事無く改善につなげたことは評価されるものと思います。
写真7 コンピテンシーの説明
(講評)阿部委員長 「非常にわかりやすい発表で、一足飛びに行かず順番に検討していらっしゃる。気になったのはタイトルで、発表内容と合っていないのではないか。見直すともっと良くなると思います。」
質問は多く出ましたが、回答は簡潔だったと思います。質問の内容は硬軟いろいろありましたが、しっかり回答されていたようです。
技術的内容が明快に説明できるか、それとタイトルと説明の大きなずれがない事が重要かと思います。田中様には、今回の発表会経験を生かして頂きながら、今後のご活躍を祈念いたします。
写真8 発表研究会のご紹介
最後に、田中様からのご感想が届きましたので、以下にご紹介いたします。
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この度は貴重な発表の機会を頂きまして大変、有難うございました。
発表に際し、技術士の方から発表資料に対して、事前にアドバイス
頂き、自分では気づけなかった、たくさんの気づきを頂き、非常に勉強に
なりました。
発表の場では、普段、関わることの出来ない分野の専門家の方から質問を頂く
ことで、自分自身の技術を色々な角度から客観的に見ることができました。
発表後には、事後サポートとして、発表資料、発表時の話し方、質問への
回答の適切さなどをフィードバック頂き、反省点や今後、改善していくべき点を
把握することができました。
事前、発表当日、事後と複数回に渡り、頂いた貴重なアドバイスを基にして、
技術士になれるよう、初期専門能力開発(IPD)の取組みを継続します。
修習技術者の方はぜひ、ご発表されてください。
自分ひとりでは得られなかった多くの気付きがあると思います。
大変、ありがとうございました。
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発表会は、希望者があれば必ず開催いたします。参加希望者は、技術士会HPの「修習技術者支援委員会」のサイト( https://www.engineer.or.jp/c_cmt/syuusyuu/)から申込み案内をご確認の上、メールにてご連絡下さい。
(文責:修習技術者支援委員会委員 石川和真(技術士(化学部門・総合技術監理部門))