「わからないことがわかった」研修会――コンピテンシーを考える
ブログをご覧の皆さま、こんにちは!
10月度ブログ担当の修習技術者支援委員会・加藤です。
10月10日(土)、「コンピテンシーを意識したマインドセットを身に着けよう」をテーマに、阿部修一講師をお迎えして研修会を開催しました。
今回は、「インフラマネジメントテクノロジーコンテスト」(以下、インフラテクコン)の技術士会賞の審査を題材に、他者のコンピテンシーを理解すること、自分自身のコンピテンシーを意識することについて考えました。
私にとって今回の研修会は、「わからないことがわかった研修会」でした。コンピテンシーについて曖昧だったことが少し整理できた一方で、他者の行動からコンピテンシーを読み取ることや、自分のコンピテンシーを相手に伝えることの難しさにも気づいたからです。
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阿部修一講師 |
司会 葛西委員 |
1.今回の研修の仕掛け――事前学習から演習・議論へ
今回の研修会では、事前課題に取り組み、他の参加者の回答にも目を通してから、当日の講義やグループワークに臨む進め方を取り入れました。事前に学び、当日は自ら考え、他者と議論する。いわゆる反転授業の考え方を取り入れ、演習と議論を研修の中心に据えた企画です。
また、同じグループ員のワークシートに目を通した上で、気に入った「推しワークシート」を選び、その理由を説明する仕組みも取り入れられました。自分ひとりで考えるだけでなく、他の参加者の考えにも触れながら、コンピテンシーについて多角的に考えられるよう工夫されていました。
はじめに、修習技術者支援委員会委員長の石川さんと、研修委員会委員長の松山さんから開会の挨拶がありました。お二人からは、事前課題に取り組んだ参加者へのねぎらいとともに、今回の進め方を他の委員会でも参考にしたいというお話がありました。
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修習技術者支援委員会 石川委員長 |
研修委員会 松山委員長 |
2.講義――結果だけでは見えないもの
講義では、問題の発見とは「見えないものを見ようとする、声なき声を聴こうとする行為」であり、そのためには想像し、仮説を立てることが重要だという考え方が紹介されました。
同じ問題解決でも、何を問題と捉え、どのような仮説を立て、どんな情報を集めて解決策を選んだのかは、人によって異なります。目に見える成果だけでなく、その背後にある考えや判断の過程に目を向けることが、コンピテンシーを理解する手がかりになります。


3.仮想事例――50を超える手がかり
今回の演習で重要な役割を果たしたのが、阿部講師が作成した仮想事例です。
事例の主人公は、高専4年生の高橋英人(仮名)。70歳代の祖父が公園の見守り活動をしている姿をきっかけに、公園管理の課題に目を向けます。仲間と調査・議論を重ね、最終的には、スマートフォンのコミュニティーアプリを活用した「シルバー×公園見守り隊」という仕組みを考えていきます。
事例では、課題の発見から、複数の対策案の検討、実現可能性の調査、今後の計画まで、一連の過程が具体的に描かれています。
実は、この事例には、コンピテンシーを読み取る手がかりが50を超えて盛り込まれていました。
例えば、祖父の活動を観察し、地域の公園管理の実態を調べること。複数の解決策を比較し、実現可能性を検討すること。関係者と調整し、協力を得ること。さらに、アプリの運営や契約、個人情報の取り扱いといった問題にも目を向けることです。
こうした一つひとつの行動や判断から、課題を発見する力、他者と協力する力、知識や技術を活用する力、技術者としての責任や倫理に対する意識などを読み取ることができます。
ただし、行動を見つけるだけで、その人のコンピテンシーを十分に理解できるわけではありません。なぜその行動を取ったのか、どのようなことを考えていたのか。その背景を想像し、何を確かめれば適切に判断できるのかを考えることも重要です。

4.実例から学ぶ――インフラテクコンのプレゼン動画
講義では、2022年のインフラテクコンで技術士会賞を受賞した長岡高専の学生によるプレゼン動画も紹介され、阿部講師から、発表のどこに着目してコンピテンシーを評価したのかについて解説がありました。当日は、動画で発表していた長岡高専OGの阿部美里さんもゲストとして参加されました。
インフラテクコンのホームページでは、過去の作品のプレゼン動画を見ることができます。皆さんも、技術士に求められるコンピテンシーなどを思い浮かべながら、動画を見てみてはいかがでしょうか。
インフラテクコン「過去作品」
https://infratechcon.com/past_works
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長岡高専の学生によるプレゼン動画 |
阿部美里さん |
5.グループワーク――同じ事実でも、見方は一つではない
参加者は、事前課題と講義を踏まえて、他者のコンピテンシーを判断するために必要な情報や、自分のコンピテンシーを相手に伝える方法などについて議論しました。
同じ情報を見ても、注目する点や解釈は人によって異なります。ある人が工夫と考える行動を、別の人は当然の対応と見るかもしれません。反対に、一見すると目立たない行動の中に、大切な判断や配慮が隠れていることもありそうです。
仮想事例に盛り込まれた行動を手がかりに、何を読み取り、どのような根拠から判断するのかを考えることは、コンピテンシーを評価する難しさを実感する機会にもなったのではないでしょうか。
そして、このことは他者を評価するときだけに限りません。自分にとって当たり前の判断や工夫も、相手には伝わっていないことがあります。結果だけでなく、前提条件や考えた過程を、相手の立場に合わせて説明することも大切です。
議論では、ファシリテーターの問いかけや助言によって、参加者が考えを整理し、深める場面がありました。一方、参加者の問いかけや発言も、ファシリテーターが自分の考えを別の視点から捉え直すきっかけとなりました。
立場の異なる人が互いの考えに耳を傾けることで、一人で考えるだけでは気づきにくい視点が得られます。グループで議論することの意義を、改めて感じました。
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6.総合討論――気づきを日常の習慣に
総合討論では、コンピテンシーを意識した考え方を、日常の習慣としてどう身につけるかについて意見が交わされました。意識したいことを目につく場所に掲示する、よい行動をする人から学ぶなど、身近なところから始める提案もありました。
他者の行動を見て、その人が何を考え、どのように判断したのかを想像してみる。自分の仕事についても、なぜそのように判断したのかを振り返り、必要に応じて相手に説明してみる。こうした実践が、他者を理解する力や自分の考えを伝える力を養うことにつながるのかもしれません。
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最後に、野田副委員長から、自己研鑽を続けることや、「なぜ」と疑問を持つことの重要性についてお話があり、研修会は終了しました。
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野田副委員長 |
会場とオンラインの参加者による集合写真を撮影し、研修会終了後には懇親会も開催されました。
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集合写真 |
7.おわりに――研修を受けた後に、自分を振り返る
今回の研修会を通じて、コンピテンシーについて、これまで曖昧だったことが少し整理できました。一方で、用語や評価項目を覚えるだけでは十分ではないこともわかりました。相手の行動の背景にある考えや判断を読み取ること、そして、自分が何を考え、どう行動したのかを他者にもわかるように示すこと。どちらも簡単そうでいて難しいものです。
今回の研修で印象に残ったのは、事前学習、演習課題、講義、グループワーク、総合討論が一つの流れとしてつながっていたことです。演習の目的に合わせた仮想事例をもとに、講義で視点を学び、参加者同士で考えを深める。その一連の仕掛けが、コンピテンシーを具体的に考える機会をつくっていました。
その中で、参加者は他者の行動を評価する難しさに向き合い、ファシリテーターも問いかけや助言のあり方を考え、企画・運営に携わった人々は、こうした学びの場をつくることに取り組みました。それぞれの立場から、コンピテンシーについて考える機会になったのではないでしょうか。
研修での学びは、受講したところで完結するのではなく、その後の行動につながってこそ意味があると思います。私も、まず自分自身を振り返り、自己評価することから始めたいと思います。
ブログを読んでくださった皆さまも、日々の仕事や身近な出来事を少し違う視点から眺めてみてはいかがでしょうか。そこには、これまで気づいていなかった自分や他者のコンピテンシーが見つかるかもしれません。
研修会の準備を長期間にわたり進め、インフラテクコン技術士会賞の審査実務チームリーダーとしての経験から得られた貴重な知見を共有してくださった阿部講師に、心より感謝申し上げます。また、研修に参加してくださった皆さま、企画・準備・運営に携わった皆さまにも、感謝申し上げます。
今後の修習技術者支援委員会の研修会にも、ぜひお気軽にご参加ください!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
(文責:加藤)















